問 題
M.ヴェーバーの理論に関する記述として最も妥当なのはどれか。
1.彼は,『社会理論と社会構造』において,社会現象を機能によって分析することを試み,社会システムの活動,維持あるいは存続に寄与する働きのことを逆機能と呼んだ。
2.彼は,支配の諸類型について検討し,伝統的支配,カリスマ的支配などの四類型を示した。そして彼は,支配者の人格とその者のもつ天与の資質や呪術的能力等に基づく支配を,伝統的支配と呼んだ。
3.彼は,官僚制について検討し,支配形態としての官僚制の特質は,行政組織にとどまらず,企業組織などの近代的組織に広く共通してみられるとした。
4.彼は,『精神・自我・社会』において,研究者の目指すべき理想像である「自由に浮動するインテリゲンチア」になるためには,客観的に思考することなく,主観的に物事を思考することが必要であるとした。
5.彼は,『国富論』において,ヨーロッパに近代資本主義が成立したのは,享楽が重視され,享楽的に行動することが求められるエートスが原因であることを明らかにした。
解 説
選択肢 1 ですが
社会を分析する際の「機能」という言葉について分類したのは「マートン」です。ヴェーバーではありません。選択肢 1 は誤りです。(H27no52)
選択肢 2 ですが
M.ヴェーバーの正統的支配の三類型です。三類型は「合法的」、「伝統的」、「カリスマ的」です。四類型ではありません。選択肢 2 は誤りです。(H26 no51)
選択肢 3 は妥当です。
ヴェーバーにより、合理的組織としての官僚制の特徴が指摘されました。
選択肢 4 ですが
知識社会学を構想し、真理に近づくためには、全体的視野から相関や歴史を見ようと立場を自由に浮動する知識人(自由に浮動するインテリゲンチャ)になるべきと唱えたのはマンハイムです。ヴェーバーではありません。また「主観的に物事を思考することが必要」としたわけでもありません。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
「国富論」は、アダム・スミスの著書です。また、ヴェーバーは、近代資本主義成立を「エートス=精神構造」に求めたのは妥当です。しかしそれは「享楽が重視され、享楽的に行動することが求められるエートス」ではありません。「プロテスタンティズムの倫理」である「世俗内的禁欲」という生活態度こそが資本主義の精神を生み出したと考えました。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 3 です。
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