公務員試験 H27年 法務省専門職員 No.17解説

 問 題     

DSM-5 (精神疾患の診断・統計マニュアル) における、自閉スペクトラム症╱自閉症スペクトラム障害 (Autism Spectrum Disorder) に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1. 言語的コミュニケーション行動及び非言語的コミュニケーション行動を表出することに欠陥があり、例えば、それらを用いて他者と意思疎通を図ることが難しい。一方、相手が発するコミュニケーション行動についてはどちらもおおむね適切に理解することができる。

2. 感覚刺激全般に関して過敏であり、触られることを嫌う、ほんの少しぶつかっただけでひどく痛がる、自分の体温変化に強くこだわる、物の匂いを嗅ぐこと、光や動くものを見ることに熱中するなどの特徴は、彼らに共通して認められるものである。

3. 症状が発達早期には認められず、思春期に至って初めて表れることがある。他の精神疾患同様,思春期における生理的バランス及び社会的要求の変化が症状の発現を促しており、これにより自閉スペクトラム症が変性疾患であることが分かる。

4. DSM-5 では 、DSM- Ⅳにおいて自閉性障害、アスペルガー障害又は特定不能の広汎性発達障害の診断が十分に確立しているもののうち、前二者に関しては自閉スペクトラム症と診断し,後一者に関しては社会的 (語用論的) コミュニケーション症と診断する。

5. DSM-5 における「スペクトラム」という表現は、機能的な障害が明らかになる局面が個々の特
性や環境によって異なること、障害の徴候が、症状の重症度、発達段階、暦年齢などによって非常に多様であることなどを示している。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害は、社会的コミュニケーション及び対人相互性反応の障害、興味の限局と常同的・反復的行動を特徴とする概念です。

選択肢 1 ですが
「相手が発するコミュニケーション行動については、・・・おおむね適切に理解することができる」という部分から誤りと判断できるのではないでしょうか。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
感覚の過敏さや鈍感さなどが見られることがあり、また、個人差があります。「感覚刺激全般に関して過敏であり・・・特徴は、彼らに共通して認められる」ものではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
乳幼児期から症状が認められます。また、思春期に限らず、大人になってから発見される例もあります。「生理的バランス及び社会的要求の変化が症状の発現を促」すのではなく、社会生活を問題なくこなしており、隠れている場合があると考えられます。一般に自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害は、生涯を通じて学習、代償し続けるとされています。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
「・・・確立しているもののうち、前二者」ではなく、「・・・確立しているもの」に関しては、自閉スペクトラム症の診断が下されます。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当な記述です。

以上より、正解は 5 です。

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