公務員試験 H27年 法務省専門職員 No.18解説

 問 題     

DSM-5 (精神疾患の診断・統計マニュアル) における、統合失調症スペクトラム障害及び他の精神病性障害群 (Schizophrenia Spectrum and Other Psychotic Disorders) に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1. 統合失調症スペクトラム障害及び他の精神病性障害群は、妄想、幻覚、まとまりのない思考 (発語) 、 衝動的な行動、陽性症状の5領域のうち一つかそれ以上の異常として定義される。この群には、妄想性パーソナリティ障害、妄想性障害、短期精神病性障害、統合失調症様障害、統合失調症などが含まれる。

2. 妄想性障害の特徴は、一つ又はそれ以上の妄想が少なくとも1か月間持続しており、妄想の直接的な影響を除けば、心理社会的機能の障害は他の精神病性障害よりも限局しており、行動は目立って奇異であったり奇妙であったりはしない。この障害には、誇大型、被害型などの下位分類が設けられている。

3. 統合失調症の診断には、妄想、幻覚、まとまりのない思考 (発語) の症状のうち少なくとも二つ以上が明らかに存在することが必要である。そのうち、妄想については理解不能で奇異な内容であること、幻覚については逐一説明する声や会話する声であること、発語については解体し、支離滅裂であることが診断の要件となっている。

4. 統合失調症の精神病性病像は、通常は 10 代~ 30 代半ばの間に出現し、それ以前に現れることはまれである。罹患率には性差があり男性の方が女性より3倍以上高く、また、男性の方がより衝動性が強く、より多くの精神病症状があり、晩年になって悪化する傾向が強いとされている。

5. 短期精神病性障害の基本的症状は統合失調症とほぼ同じだが、急激に発症し、障害エピソードの持続期間は少なくとも1日以上1か月未満で、最終的には病前の機能レベルにまで回復するところを特徴とする。この障害は、一過性で機能の低下も小さいため、統合失調症スペクトラム障害の中では最も軽症とされている。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

選択肢 1 ですが
定義としてあげられている「陽性症状」に違和感を覚えるのではないでしょうか。統合失調症の陽性症状とは、幻覚、妄想、興奮などであり、前に出てきているものと重複します。正しくは「陰性症状」です。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当な記述です。

選択肢 3 ですが、DSM – 5 によれば
・妄想
・幻覚
・まとまりのない発語
・ひどくまとまりのない、または緊張病性の行動
・陰性症状(感情の平板化、意欲欠如) のうち2つ、おのおの1ヶ月間ほぼいつも存在し、少なくともひとつは「妄想、幻覚、まとまりのない発語」である。というのが診断の要件です。「妄想、幻覚、まとまりのない発語」のうち「少なくとも2つ」が必要ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
統合失調症は、国や地域、民族、男女などによる差はほとんどみられません。有病率は人口の約 1 %程度です。「性差があり男性の方が女性より 3 倍以上高い」という記述が誤りです。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
選択肢 の 1 文目は妥当です。ちなみに、短期精神病性障害は、基本的症状に加え、治療方針も統合失調症の急性増悪と同じです。そう考えると、最後の一文における「機能の低下も小さい」という部分が妥当ではないと考えられます。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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