公務員試験 2020年 国家一般職(行政) No.56解説

 問 題     

相互作用に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.M.オルソンは,大規模な集団において問題解決のための社会的コスト(社会運動への参加など)を支払わず,成果だけを得ようとするフリーライダーが発生すると主張したC.C.ホマンズの合理的選択理論を,人間関係における互酬性を重視する交換理論の立場から批判した。

2.A.シュッツは,理解社会学の観点から現象学を否定し,人間行為を解明するには現象の背後にある行為の動機の理解が不可欠であるという立場から,目的合理的行為,価値合理的行為,感情的行為,伝統的行為という社会的行為の四類型を提示した。

3.エスノメソドロジーとは,人々の日常会話の中で語られる集団の神話や歴史を分析することを意味し,その創始者であるレヴィ=ストロースは,M.モースの贈与論に示唆を得て,子供の交換を通して親族関係が生成し,維持されるメカニズムを明らかにした。

4.G.ジンメルは,相互作用を内容と形式に分離し,形式を社会学の対象とする形式社会学の立場を批判した上で,相互作用の内容(目的・意図・関心など)を他者との合意形成とするコミュニケーション的行為の理論を提唱した。

5.E.ゴフマンは,日常生活における対面的な相互作用を研究対象とし,偶然その場に居合わせた人々が他者の存在を認知しながらも,礼儀として相手に過剰な注意を払わない作法を儀礼的無関心と呼んだ。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが
オルソンは、集合行為問題を論じた人です。集合行為問題とは、複数の人間に共通利益があっても、ただのりして利益を得ようとするフリーライダーになろうとすることで、協力が見られない、という問題です。利益集団の規模が大きい時に特に問題となります。(H28no5)。ホマンズは、交換理論を展開しました。ホマンズらの展開した交換理論とは、行為者の行為を金銭的価値に置き換え行為者間の相互作用を金銭的価値の交換として捉え、焦点を当て,社会関係や社会構造を説明しようとした理論です。(H26no59)。主張した理論や問題と、人名の対応が逆です。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
A.シュッツは、現象学的社会学の提唱者です。『社会的世界の意味構成』において M.ヴェーバーの理解社会学の問題点を指摘し,理解社会学に哲学的基礎を与えました。(H29no58)。また、社会的行為の四類型を示したのはヴェーバーです。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
エスノメソドロジーの創始者は、ガーフィンケルです。(H29no58)。レヴィ=ストロースではありません。レヴィ=ストロースは構造主義を提唱し、未開社会にも文明社会に匹敵する合理的思考が存在することを指摘しました。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
ジンメルの社会学「形式社会学」と呼ばれます。ジンメルは、社会を「個人から離れて実体的に存在しているのではなく、人々の相互行為やコミュニケーションによる結びつきによって成り立っている」と考えました。コミュニケーション的行為の理論を提唱したのはハーバーマスです。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
ゴフマンについての記述です。

以上より、正解は 5 です。

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