公務員試験 2020年 国家一般職(行政) No.47解説

 問 題     

国際経営に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.J.D.トンプソンは,1960 年代までの米国の多国籍企業の海外展開に基づき,企業の国際化に関するプロダクトサイクル仮説を提唱した。それによれば,最初に米国で開発された新製品に対する需要が発展途上国において拡大することによって,現地生産は行われないまま米国において当該製品の生産が急増し,米国から発展途上国へ大量に輸出が行われるとされている。

2.J.バーキンショーとN.フッドは,海外子会社の役割を決める要因として,「本社からの役割の付与」「現地従業員の知識レベル」「現地環境による影響」「現地市場における自社のシェア」の四つを挙げた。これらのうち,「本社からの役割の付与」が最も大きな影響を与えてしまうため,海外子会社のマネジャーによる役割決定の余地はないとした。

3.J.M.ストップフォードとL.T.ウェルズは,海外進出のフェーズに応じて企業が採り得る組織形態として,「国際事業部」「世界的製品別事業部制」「地域別事業部制」「グリッド構造」を挙げた。これらのうち,海外製品多角化度と海外売上高比率の双方とも高い水準にある企業が採る組織形態が「グリッド構造」である。

4.C.A.バートレットとS.ゴシャールは,グローバル・イノベーションのパターンを四つに分類した。それらのうち,「センター・フォー・グローバル型」イノベーションとは,海外子会社で生まれた新たな技術や知識が他の国にも適用されることにより,グローバルな利益をもたらすものであり,これは,主に「マルチナショナル型」の多国籍企業において採られるイノベーションのパターンである。

5.企業が国際化する際の進出形態は,取引による進出と直接投資による進出に大別される。前者として「合弁」と「完全所有子会社」があり,後者として「輸出」と「ライセンス供与」がある。これら四つの形態のなかで,自社からの資源のコミットメントが最も大きく,国際化の最終段階とされるのが「ライセンス供与」である。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
プロダクトサイクル仮説の提唱者はバーノンです。(H26no48)。トンプソンは、テクニカル・コアを環境の不確実性から隔離する方法として、緩衝化や平準化を発見しました。テクニカルコアとは、組織の目的を達成するための一つあるいはそれ以上のテクノジーから構成されているシステムのことです。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
バーキンショーとフッドは子会社に関する理論の提唱者です。役割を決める要因は知らなかったかもしれませんが「海外子会社のマネジャーによる役割決定の余地はない」というのはおかしい記述と判断したい内容です。ちなみに、海外子会社の役割を決める要因としてバーキンショーらがあげたのは「親会社からの役割の付与」、「子会社の選択」、「ローカルでの環境要因」の3つです。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
ストップフォードとウェルズの、組織形態の発展モデルについての記述です。グリッド構造は、グローバル・マトリックス構造とも呼ばれます。

選択肢 4 ですが
現地子会社と対応するのが「ローカル」です。海外子会社で生まれた技術や知識がグローバルな利益をもたらすというパターンは「ローカル・フォー・グローバル」です。「センター・フォー・グローバル」は、本国本社がイノベーションの主体で,その成果を海外子会社に適用するタイプです。(類題 H28no46)。バートレットとゴシャールは、多国籍企業の組織構造を,活動の配置と活動の調整の二つの基準で4つに類型化して示しました。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
取引による進出 と対応するのが「輸出」、「ライセンス供与」です。直接投資による進出に対応するのが「合弁」、「完全所有子会社」です。対応が逆です。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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