問 題
世界経済の状況に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。
1.2018 年前半の米国の長期金利の動向についてみると,原油高によるインフレ期待などを背景に,10 年債の金利が 3 % 台に上昇した時期があった。一方, 2 年債と 5 年債の利回りは,2018 年末に逆転する局面があった。
2.2018 年のユーロ圏全体の実質 GDP 成長率(前期比,季節調整済)をみると,前年のマイナス基調から,第1 四半期にプラスへと転じ,それ以降,第 4 四半期までプラスで推移した。また,2018 年のドイツの実質 GDP 成長率(前期比,季節調整済)をみると,第 1 四半期のマイナスから第 3 四半期には年率で 4 % を超えるプラスとなった。
3.英国の消費者物価上昇率(総合,前年同月比)の推移をみると,2016 年半ばの EU 離脱をめぐる国民投票後,2017 年末まで鈍化傾向で推移し,それ以降 2019 年 7 月現在まで上昇率が拡大して推移している。また,英国の実質賃金上昇率(前年同月比)をみると,2017 年末以降 2019 年 4 月現在までマイナスで推移している。
4.中国の非金融企業における債務残高(対 GDP 比)の推移をみると,2010 年初め以降 2016 年末まで,減税の実施などの景気拡大政策に支えられ,低下傾向で推移していた。一方,2017 年以降 2018 年末時点まで,中国経済の減速に伴い,上昇傾向で推移している。
5.中国の実質 GDP 成長率(前年同期比)を需要項目別にみると,2010 年以降 2017 年までは,純輸出の寄与が総資本形成の寄与を大きく上回っていた。しかし,2018 年は,米中貿易摩擦の影響により対米輸出が前年同月比マイナスで推移した結果,2018 年の実質 GDP 成長率に対する純輸出の寄与はマイナスとなった。
解 説
選択肢 1 は妥当です。
償還(返済)までの期間が長い国債の利回りが、短い国債の利回りを下回る「長短金利逆転(逆イールド)」と呼ばれる現象が起きました。長短金利の接近や逆転は景気後退の予兆とされます。
選択肢 2 ですが
ユーロ圏全体の実質 GDP 成長率は、2020 年の 1 ~ 3 月期に、新型コロナウイルス感染症の影響によりマイナスになるまで、2013 年 4~6 月期以降ずっとプラスで推移しています。(H30no45)。
選択肢 3 ですが
EU離脱をめぐる国民投票→ポンド下落→輸入物価上昇 という流れから、消費者物価指数が 2017 年末までぐっと上昇しました。また、英国の実質賃金上昇率ですが、2017 年末以降 2019 年4月現在まで、上昇傾向にあり、プラスで推移しています。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
中国の債務残高は 2010 年以降ずっと増加傾向です。「2010 年初め以降 ・・・,低下傾向で推移していた」わけではありません。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
総資本形成とは、総固定資本形成と在庫変動のことです。具体的には、住宅等の固定資産の増加や、原材料や流通品の増加です。2010 年以降ほぼ一貫して、中国の実質 GDP 成長率に関して、総資本形成の寄与が、純輸出の寄与を大きく上回っています。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 1 です。
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