公務員試験 2020年 国家一般職(行政) No.22解説

 問 題     

意思表示に関するア~オの記述のうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし,争いのあるものは判例の見解による。

ア.意思表示は,その通知が相手方に到達した時からその効力が生じるところ,内容証明郵便を送付したが,相手方が仕事で多忙であるためこれを受領することができず,留置期間経過後に差出人に返送された場合には,相手方が不在配達通知書の記載等により内容証明郵便の内容を推知することができ,受取方法を指定すれば容易に受領可能であったとしても,その通知が相手方に到達したとはいえず,意思表示の効果が生じることはない。

イ.A所有の不動産について,BがAの実印等を無断で使用して当該不動産の所有権登記名義をBに移転した場合において,Aが当該不動産につき不実の登記がされていることを知りながらこれを明示又は黙示に承認していたときであっても,AB間に通謀による虚偽の意思表示がない以上,その後にBから当該不動産を購入した善意のCが保護されることはない。

ウ.錯誤は,表意者の重大な過失によるものであった場合は,取り消すことができないが,偽物の骨董品の取引において当事者双方が本物と思っていた場合など,相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたときは,取り消すことができる。

エ.詐欺とは,人を欺罔して錯誤に陥らせる行為であるから,情報提供の義務があるにもかかわらず沈黙していただけの者に詐欺が成立することはない。

オ.相手方に対する意思表示について第三者が強迫を行った場合,相手方が強迫の事実を知らなかったとしても,その意思表示を取り消すことができるが,相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合において,相手方が詐欺の事実を知らず,かつ,知ることもできなかったときは,その意思表示を取り消すことはできない。

1.ア,イ
2.ア,エ
3.イ,ウ
4.ウ,オ
5.エ,オ

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

記述 ア ですが
最判 H10.6.11 によれば、内容の推知可能性と受領可能性の2点が肯定される場合、通知が到達したと認められています。到達が認められる結果、意思表示の効果が生じます。記述 ア は誤りです。

記述 イ ですが
最判 S45.9.22 によれば、民法 94 条 2 項を類推適用し(B が勝手に登記移転しており、A と「通じて」いないため、直接は適用できない)、善意の第三者が保護されます。記述 イ は誤りです。

記述 ウ は妥当です。
改正民法第 95 条 3 項のニ の内容です。

記述 エ ですが
判例 大判 S16.11.18 によれば、信義則上相手方に告知する義務がある事実を黙秘した場合には,沈黙も欺罔行為になり得ます。記述 エ は誤りです。

記述 オ は妥当です。
民法第 96 条第 1,2 項です。

以上より、正解は 4 です。

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