公務員試験 2019年 国家一般職(行政) No.56解説

 問 題     

都市と地域社会に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.M.ヴェーバーは,第二次世界大戦後の日本では,インドから伝来した仏教の禁欲思想や対等な人間関係に基づいて形成された古代中国の都市文明の遺産の影響で,西洋社会とは異なる独自の資本主義的発展が可能になったと主張した。

2.E.W.バージェスは,都市の空間的発展を定式化した同心円地帯理論に基づき,中心業務地区と労働者居住地帯の間には移民を中心とした貧困層の生活する遷移地帯が形成され,さらに,それらの外部には中流階級居住地帯,通勤者地帯が広がるとした。

3.M.カステルは,グローバル化の観点から都市の比較研究を行い,世界規模で展開する企業の中枢管理部門やそれらを対象とする法律・会計,情報,清掃・管理などの各種サービス業が集積する都市を世界都市と名付け,東京をその一つとした。

4.C.S.フィッシャーは,大きな人口規模,高い人口密度と異質性を都市の特徴とし,そこで形成される生活様式をアーバニズムと名付け,人間関係においては,親密な第一次的接触に対して,表面的で非人格的な第二次的接触が優位を占めるとした。

5.S.サッセンによれば,急激な都市化が進むことにより,個人的消費に対して,政府や自治体が提供する公共財(公園,上下水道,公営住宅,病院,学校などの生活基盤)の集合的消費が都市生活の中心となり,公共財の拡充を求める都市社会運動も多発するとした。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

選択肢 1 ですが
M.ヴェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」によれば、プロテスタントの世俗内禁欲が、資本主義の精神に適合性を持っていたとされています。(H29no57)。第二次世界大戦後の日本と資本主義的発展についての主張は特に見られません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当です。
バージェスの同心円地帯理論についての記述です。

選択肢 3 ですが
M.カステルは、著書『情報都市』のなかで「フローの空間」概念を提示し、グローバルな情報文化を構成する物質的要素と非物質的要素の分析軸を与えました。フローの空間とは、物理的な近接なしに、同時的、リアル・タイムな相互作用が可能であるような、新たな空間形態のことです。「世界都市」をなづけた人ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
アーバニズムを唱えたのは、ワースです。フィッシャーは、ワースのアーバニズムに対して、社会のネットワーク状のつながりに注目し「下位文化理論」を作り上げた人物です。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
S.サッセンは、国際労働移動研究、都市研究、​グローバリゼーション研究を行いました。「グローバル・シティ」が代表的著作です。「都市社会運動」は、カステルが提示した分析概念です。草の根レベルで公共財の再配分権を主張する社会運動のことです。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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