公務員試験 2019年 国家一般職(行政) No.53解説

 問 題     

国際機構と国際的枠組みに関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.国際連合安全保障理事会は, 5 か国の常任理事国と 10 か国の非常任理事国から構成され,「国際の平和及び安全の維持に関する主要な責任」を負う。同理事会は,国連憲章第7 章に基づく軍事的な強制措置を発動することができる。

2.第一次世界大戦後の1920 年代には,地理的に近接している複数の国家が協力・統合し,多くの地域機構が生まれた。現在も欧州連合(EU),アフリカ連合(AU),米州機構(OAS),アジア開発銀行(ADB)等が,地域機構として地域内の様々な活動を行っている。

3.国連平和維持活動(PKO)は,機能不全に陥った国際連盟を補完して,紛争解決を図るために始まり,その数と活動範囲は,第二次世界大戦後に飛躍的に拡大した。それに伴う課題に取り組んだ,いわゆる「ブラヒミ・レポート」は,国連PKO の改革を唱えた。

4.2000 年に開催された国連ミレニアム・サミットは,気候変動の危機への対応を主目的として国際開発目標を統合し,国連ミレニアム開発目標(MDGs)を採択した。これにより,国連加盟国は,MDGs の遵守を義務付けられた。

5.1968 年に核兵器不拡散条約(NPT)が署名のために開放された。NPT は,核兵器保有国に対して,原子力発電などの平和利用を行う場合の国際原子力機関(IAEA)の査察受入れ等の民間転用防止を義務付けた。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1 は妥当です。
国連安全保障理事会に関する記述です。

選択肢 2 ですが
地域機構とは、ある地域の国々が,政治や経済の協力を進めるために結成する組織のことです。アジア開発銀行は、アジア・太平洋地域を対象とする国際開発金融機関です。地域機構ではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
PKO の起源は、第一次中東戦争後の 1948 年に設立された国連休戦監視機構(UNTSO)に遡るとされています。ただし、実際に、国連の活動として加盟国の間で強く意識され、PKO という名称が定着するようになったのは、スエズ危機後の 1956 年に設立された国連緊急軍(UNEF)以降のことです。「機能不全に陥った国際連盟を補完して・・・始ま」ったわけではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
ミレニアムサミットでは、平和と安全、開発と貧困、環境、人権とグッドガバナンス(良い統治)、アフリカの特別なニーズなどが課題として掲げられました。国連ミレニアム宣言と、1990 年代に開催された主要な国際会議やサミットで採択された国際開発目標を統合し、一つの共通の枠組みとしてまとめられたものがミレニアム開発目標です。「気候変動の危機への対応を主目的として」統合したというのは妥当ではないと考えられます。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
核兵器不拡散条約(NPT:Treaty on the Nonproliferation of Nuclear Weapons)は,核兵器の拡散防止、核兵器国の核軍縮交渉進展、さらに,原子力の平和的利用のための協力を促進を主目的とする条約です。「原子力の平和的利用の軍事技術への転用を防止」であり、「民間転用防止」が義務付けられているわけではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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