公務員試験 2019年 国家一般職(行政) No.48解説

 問 題     

技術経営に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.モジュラー型アーキテクチャの製品においては,部品間のインターフェースが事前に標準化されておらず開発活動の過程で各部品の最適設計を行えるが,部品間の相互依存性が高いため,1990 年代にT.J.アレンが存在を明らかにしたゲート・キーパーによる社内調整活動が不可欠となる。

2.W.J.アバナシーとJ.M.アッターバックは,イノベーションを製品イノベーションと工程イノベーションの二つに分類し,両者の発生頻度の組合せに応じて産業の発展段階を流動期,移行期,固定期の三つに分けた。彼らは,ドミナント・デザインの登場によって産業の発展段階が移行期から固定期へと推移し,また,固定期では工程イノベーションの発生頻度が増大していくとした。

3.ある製品がその利用者に与える満足の程度を表す「総合品質」を規定する二種類の品質のうち,「設計品質」は設計図面に定められている機能や外観,性能のとおりに製品が作られているかどうかの程度を表し,「適合品質」は製品の設計図面が法令や規制に準拠しているかどうかの程度を表している。

4.米国フォード社は,1920 年代までに確立されたフォード・システムと呼ばれる自動車の大量生産方式において,セル生産方式と汎用性のある工作機械の導入によって生産性を向上させた。このため需要量や品種の変動に柔軟に対応できなくなるという生産性のジレンマに陥ることなく,米国ゼネラル・モーターズ社のフルライン戦略に直面した後も市場シェアを長期間維持できた。

5.H.W.チェスブロウは,自社内と社外のアイデアや技術・知識を有機的に結合させ,新たな価値を創造する活動をオープン・イノベーションと呼んだ。オープン・イノベーションにより,社外のアイデアや技術を見つけて活用することや,自社で有効に活用できない研究成果については他社に譲渡して利益を得ることなども可能となる。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが
モジュラー型は、部品間で信号や動力をやりとりする連結部分であるインターフェースを標準化することで、機能と部品がほぼ一対一の対応関係を持つアーキテクチャです。(H26no46)。部品間の相互依存性は低い型です。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
アバナシーとアッターバックによる「流動期→移行期→固定期」という、イノベーション・ダイナミクスモデルに関する記述です。このモデルにおいて、流動期は「製品イノベーション 高頻度、工程イノベーション 低頻度」です。その後、市場における「ドミナントデザイン」が確立され、移行期へ推移すると、工程イノベーションに力点が移り、工程イノベーションが高頻度になる、という考え方です。その後固定期へ移行すると、製品イノベーション、工程イノベーション共に低下していきます。(H26no46)。「固定期では工程イノベーションの発生頻度が増大していく」わけではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
総合品質を規定する二種類の品質のうち、設計品質は「製品やサービスの仕様書・設計図・規格値などが、お客様のニーズに適合している程度」です。「設計図面・・・とおりに製品が作られているかどうかの程度」は適合品質です。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
フォード・システムは、車種を1つに限定し、部品に互換性を与え、ベルトコンベアーによる流れ作業方式を導入したシステムです。ゼネラルモーターズ社のフレキシブル大量生産方式が、汎用工作機械を用いた生産方式です。(H29no48)。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
チェスブロウのオープン・イノベーションについての記述です。

以上より、正解は 5 です。

 

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