公務員試験 2019年 国家一般職(行政) No.45解説

 問 題     

世界経済に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.国際通貨基金(IMF)によると,2017 年の実質 GDP 成長率は,新興国及び途上国においては堅調に推移したものの,先進国においてマイナスとなったため,世界全体の成長率もマイナスとなった。また,米国の 2018 年度予算で組み込まれた,財政政策の規模の縮小や法人税などの増税の影響が今後の先進国経済の GDP の押し下げ要因となると懸念されている。

2.世界貿易機関(WTO)によると,世界の財貿易量の伸び率を実質 GDP 成長率で除した数値は 2000 年以降,世界金融危機の直前までは 1.0 以下の水準となるスロートレードの状態が続いてきた。しかし,2009 年以降はこの数値が 1.0 を超える状態が継続しており,2017 年の当該数値は,2.0 を超える水準となっている。

3.国連貿易開発会議(UNCTAD)及び WTO により,世界の貿易額をみると,2012 年以降,サービス貿易額(輸出額ベース)の前年比伸び率は財貿易額(輸出額ベース)の伸び率を大きく下回る状況が続いており,2017 年のサービス貿易額の前年比伸び率は 2 % 程度となった。また,2017 年のサービス貿易額が貿易額全体に占める割合をみると,50 % 程度となっており,2008 年以降最も低い水準となった。

4.UNCTAD によると,2016 年の世界の対内直接投資(国際収支ベース,ネット,フロー)は前年比で 5 % 程度増加して,10 兆ドルを上回る水準となった。また,2016 年における当該直接投資の地域別構成比を 2000 年と比較すると,アジアやアフリカに対する投資の割合は減少したのに対し,欧州への投資割合は大きく増加し 2016 年には全体の 50 % 程度を占めている。

5.2000 年代後半の世界金融危機以降,世界各国の中央銀行は大胆な金融緩和政策を実施してきたが,その後,欧米においては徐々に金融政策の正常化の動きがみられた。米国連邦準備制度理事会は 2015 年 12 月にゼロ金利政策を解除し,その後,2018 年末現在まで,段階的に政策金利を引き上げた。また,欧州中央銀行においても,資産購入プログラム(APP)を 2018 年内に終了した。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが
2017 年の世界全体の経済成長率は 3.8 % です。マイナスにはなっていません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
2008 年金融危機以降、世界の実質 GDP 成長率を、貿易量の伸び率が下回る状況が 2016 年頃まで長らく観察され、「スロー・トレード」(Slow Trade)と呼ばれました。「2009 年以降は・・・1.0 を超える状態が継続して」いるわけではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
サービス貿易額の、貿易額全体に占める割合はここ 10 年ほど増加傾向で、本試験時点で 20% 強です。「50% 程度」ではありません。また、最も「高い」水準です。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
対内直接投資とは、他国から自国への投資です。欧州への投資割合が 全体の 50% 程度を占めるという記述には違和感を覚えるのではないでしょうか。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
金融政策に関する記述です。

以上より、正解は 5 です。

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