公務員試験 2019年 国家一般職(行政) No.30解説

 問 題     

親子に関する ア~オ の記述のうち,判例に照らし,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

ア.嫡出でない子との間の親子関係について,父子関係は父の認知により生ずるが,母子関係は,原則として,母の認知をまたず,分娩の事実により当然発生する。

イ.認知者が,血縁上の父子関係がないことを知りながら,自らの意思に基づいて認知をした後,血縁上の父子関係がないことを理由に当該認知の無効を主張することは,被認知者の地位を不安定にすることから,認められない。

ウ.婚姻前に既に内縁関係にあり,内縁成立後 200 日を経過している場合であっても,婚姻成立後 200 日以内に出生した子については,嫡出子としての推定を受けないことから,父が子の嫡出性を争う場合には,嫡出否認の訴えではなく,父子関係不存在確認の訴えによる。

エ.配偶者のある者が未成年者を養子にする場合には,配偶者とともにこれをしなければならないことから,夫婦の一方の意思に基づかない縁組の届出がなされたときには,縁組の意思を有する他方の配偶者と未成年者との間で縁組が有効に成立することはない。

オ.親権者自身が金員を借り受けるに当たり,その貸金債務のために子の所有する不動産に抵当権を設定する行為は,当該借受金をその子の養育費に充当する意図であったとしても,民法第 826 条にいう利益相反行為に当たる。

1.ア,ウ
2.エ,オ
3.ア,イ,エ
4.ア,ウ,オ
5.イ,ウ,オ

(参考) 民法
(利益相反行為)
第826 条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については,親権を行う者は,その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。(第2 項略)

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

記述 ア は妥当です。
最判 S37.4.27 の内容です。母と非嫡出子間の親子関係は、原則として、母の認知をまたず、分娩の事実により当然発生します。

記述 イ ですが
最判 H26.1.14 によれば、補足意見、意見及び反対意見があるのですが、認知者は,民法 786 条に規定する利害関係人に当たり,自らした認知の無効を主張することができ,この理は,認知者が血縁上の父子関係がないことを知りながら認知をした場合においても異ならない、と示しています。記述 イ は誤りです。

記述 ウ は妥当です。

記述 エ ですが
民法 795 条但し書きより、配偶者の嫡出である子を養子とする場合 又は 配偶者がその意思を表示することができない場合は、縁組が有効に成立することがありえます。記述 エ は誤りです。

記述 オ は妥当です。
最判 S37.10.2 の内容です。

以上より、正解は 4 です。

コメント