公務員試験 2019年 国家一般職(行政) No.28解説

 問 題     

契約の解除に関する ア~オ の記述のうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし,争いのあるものは判例の見解による。

ア.当事者の一方が数人ある場合には,契約の解除は,その一人から又はその一人に対してすることができ,また,解除権が当事者のうちの一人について消滅しても,他の者については消滅しない。

イ.契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有する場合は,その解除は,相手方に対する意思表示によってするが,解除に条件を付けることは認められないことから,当事者の一方がその債務を履行しないときに,履行の催告をすると同時に,相当の期間内に履行しないならば解除する旨の意思表示を行うことはできない。

ウ.解除権の行使について期間の定めがない場合は,相手方は,解除権を有する者に対し,相当の期間を定めて,その期間内に解除するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができ,その期間内に解除の通知を受けないときは,解除権は消滅する。

エ.当事者の一方がその解除権を行使した場合は,各当事者は,その相手方を原状に復させる義務を負う。また,解除前の第三者に対しては,原状回復義務を理由としてその権利を害することはできないが,当該第三者が解除原因を知っているときは保護されない。

オ.不動産を目的とする売買契約に基づき買主に移転した所有権が解除によって遡及的に売主に復帰した場合において,売主は,その所有権取得の登記を了しなければ,その契約解除後に買主から不動産を取得した第三者に対し,所有権の取得を対抗することができない。

1.ア,イ
2.ア,エ
3.イ,ウ
4.ウ,オ
5.エ,オ

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

記述 ア ですが
民法 544 条によれば、当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができます。また、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅します。記述 ア は誤りです。

記述 イ ですが
原則として、他の単独行為同様、契約解除に条件・期限をつけることはできません。しかし、大審院判決M43.12.9 によれば「相当期間内に履行しなければ」解除するという条件を含む催告は、相当期間を定めた催告と同じ意味であるので、認められます。記述 イ は誤りです。

記述 ウ は妥当です。
民法 547 条の通りです。

記述 エ ですが
解除前の第三者について、解除原因を知っていても、保護されます。つまり、原状回復義務を理由として第三者の権利を害することはできません。記述 エ は誤りです。

記述 オ は妥当です。
買い主を起点とした不動産の二重売買類似の状況と考えるとわかりやすいと思われます。登記によって第三者に対抗できます。

以上より、正解は 4 です。

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