公務員試験 2019年 国家一般職(行政) No.27解説

 問 題     

相殺に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。ただし,争いのあるものは判例の見解による。

1.相殺をなし得るためには,相殺をする者とその相手方との間に対立する債権が存在していなければならないから,保証人は,主たる債務者の債権による相殺をもって債権者に対抗することができない。

2.受働債権を不法行為に基づく債権とする相殺は原則として許されないが,双方の債権がいずれも相手方の不法行為に基づく債権であって,かつ,それが同一の事故により生じたものである場合には,相殺は許される。

3.相殺は,当事者の一方から相手方に対する意思表示によってするが,双方の債権は,相殺の意思表示を行った時点で,その対当額において消滅し,その消滅の効力は遡らない。

4.相殺は,双方の債権がいずれも有効に存在していなければならないから,一方の債権が時効により消滅していた場合には,その債権が消滅前に相殺適状にあったとしても,その債権を自働債権として相殺することができない。

5.相殺の意思表示は,単独の意思表示で法律関係の変動を生じさせる形成権の行使である。また,相殺の意思表示には,条件又は期限を付けることができない。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが
民法 457 条 2 項より、保証人は、主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができます。従って、主たる債務者の債権による相殺で債権者に対抗できます。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
改正民法第 509 条によれば

「悪意による不法行為」に基づく損害賠償債務 及び 「人の生命又は身体の侵害による」損害賠償債務 が、相殺をもって債権者に対抗できないとなりました。従って、悪意の有無や、物損かどうかで相殺が許されるかどうかが変わります。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
民法 506 条 2 項より、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時に、さかのぼってその効力を生じます。意思表示時点で消滅するわけではありません。(H27no27 イ)。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
民法 508 条より、時効により消滅した債権が、時効消滅以前に相殺に適するようになっていた場合、債権者は、相殺できます。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
民法 506 条の通りです。

以上より、正解は 5 です。

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