公務員試験 2019年 国家一般職(行政) No.21解説

 問 題     

法人に関する ア~オ の記述のうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

ア.民法は,法人の設立,組織,運営及び管理についてはこの法律の定めるところによると規定しており,法人制度全体の原則規定だけでなく,法人の管理,解散等に係る一般的な規定は全て同法で定められている。

イ.いわゆる権利能力のない社団の資産は,その社団の構成員全員に総有的に帰属しているのであって,社団自身が私法上の権利義務の主体となることはないから,社団の資産たる不動産についても,社団はその権利主体となり得るものではなく,したがって,登記請求権を有するものではないとするのが判例である。

ウ.およそ社団法人において法人とその構成員たる社員とが法律上別個の人格であることはいうまでもなく,このことは社員が一人である場合でも同様であるから,法人格が全くの形骸にすぎない場合,又はそれが法律の適用を回避するために濫用されるような場合においても,法人格を否認することはできないとするのが判例である。

エ.税理士に係る法令の制定改廃に関する政治的要求を実現するため,税理士会が政治資金規正法上の政治団体に金員の寄附をすることは,税理士会は税理士の入会が間接的に強制されるいわゆる強制加入団体であることなどを考慮してもなお,税理士会の目的の範囲内の行為といえるから,当該寄附をするために会員から特別会費を徴収する旨の税理士会の総会決議は無効とはいえないとするのが判例である。

オ.会社による政党への政治資金の寄附は,一見会社の定款所定の目的と関わりがないものであるとしても,客観的,抽象的に観察して,会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められる限りにおいては,会社の定款所定の目的の範囲内の行為であるとすることを妨げないとするのが判例である。

1.ア,ウ
2.ア,エ
3.イ,エ
4.イ,オ
5.ウ,オ

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

記述 ア ですが
法人の管理、解散等に係る一般的な規定は、会社法で定められています。全て民法で定められているわけではありません。記述 ア は誤りです。

記述 イ は妥当です。
権利能力なき社団と不動産の登記方法に関する 最判 S47.6.2 に関する記述です。

記述 ウ ですが
最判 S44.2.27 によれば、社団法人において、法人格がまつたくの形骸にすぎない場合、またはそれが法律の適用を回避するために濫用される場合には、その法人格を否認することができます。記述 ウ は誤りです。

記述 エ ですが
南九州税理士会事件の判例によれば、税理士会が、政党など政治資金規正法上の政治団体に金員を寄付することは、税理士会の目的の範囲外の行為です。そして、政党など政治資金規正法上の政治団体に金員の寄付をするために会員から特別会費を徴収する旨の税理士会の総会決議は無効です。記述 エ は誤りです。

記述 オ は妥当です。
八幡製鉄所政治献金事件の判例に関する記述です。

以上より、正解は 4 です。

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