公務員試験 2019年 国家一般職(行政) No.17解説

 問 題     

行政上の義務履行確保に関する ア~オ の記述のうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

ア.直接強制は,行政上の義務者の身体又は財産に直接強制力を行使して義務の履行があった状態を実現するものであり,その性質上,法令の根拠が必要であるが,条例は住民の代表機関である議会によって制定されたものであるから,条例を根拠として直接強制を行うことができると一般に解されている。

イ.執行罰は,行政上の義務者に一定額の過料を課すことを通告して間接的に義務の履行を促し,なお義務を履行しない場合にこれを強制的に徴収するものであるが,相手方が義務を履行するまで反復して執行罰を課すことは,二重処罰を禁止した憲法の趣旨に照らし,許されない。

ウ.農業共済組合が,法律上特に独自の強制徴収の手段を与えられながら,この手段によることなく,一般私法上の債権と同様,訴えを提起し,民事執行の手段によって債権の実現を図ることは,当該法律の立法趣旨に反し,公共性の強い農業共済組合の権能行使の適正を欠くものとして,許されないとするのが判例である。

エ.行政代執行をなし得るのは,原則として代替的作為義務であるが,非代替的作為義務であっても,他の手段によって履行を確保することが困難であり,かつ,不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは,例外的に行政代執行をなし得ることが行政代執行法上定められている。

オ.行政代執行のために現場に派遣される執行責任者は,その者が執行責任者本人であることを示すべき証票を携帯し,要求があるときは,いつでもこれを呈示しなければならない。

1.ア,イ
2.ア,ウ
3.イ,エ
4.ウ,オ
5.エ,オ

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

記述 ア ですが
直接強制は、条例を根拠としてはできないと解されています。(H27no17)。記述 ア は誤りです。

記述 イ ですが
執行罰とは、行政上の強制執行の一つです。「将来行政上の義務を果たさせるために、過料を科し、心理的圧迫を与える」行為です。繰り返し科すことができます。(H27no17)。

記述 ウ は妥当です。
最判 S41.2.23 です。簡易迅速な手段がわざわざあるのだから、私法上の債権と同様の迂遠な方法をとることは許されないという考えで、バイパス理論と呼ばれます。

記述 エ ですが
行政代執行の対象は、代替的作為義務です。非代替的作為義務は対象ではありません。非代替的作為義務とは、例えば「住居から立ち退かなければならない」といった義務です。代わりの人が出ていってあげるということはできないため、非代替的となります。記述 エ は誤りです。

記述 オ は妥当です。

以上より、正解は 4 です。

コメント