公務員試験 2019年 国家一般職(行政) No.15解説

 問 題     

憲法の最高法規性に関する ア~オ の記述のうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

ア.憲法が日本国民に保障する基本的人権は,人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって,これらの権利は,過去幾多の試錬に堪え,現在及び将来の国民に対し,侵すことのできない永久の権利として信託されたものであることを,憲法は明文で規定している。

イ.憲法第98 条第1 項により,憲法に違反する法律は,原則として当初から無効であり,また,これに基づいてされた行為の効力も否定されるべきものであると解されるため,投票価値の不平等が憲法の選挙権の平等の要求に反する程度となっていた議員定数配分規定の下における選挙は無効であるとするのが判例である。

ウ.憲法第98 条第1 項にいう「国務に関するその他の行為」とは,国の行う全ての行為を意味し,国が行う行為であれば,私法上の行為もこれに含まれるのであって,国が私人と対等の立場で行った売買契約も「国務に関するその他の行為」に該当するとするのが判例である。

エ.我が国が締結した条約が,主権国としての我が国の存立の基礎に極めて重大な関係を持つ高度の政治性を有する場合,その合憲性の判断は,純司法的機能をその使命とする司法裁判所の審査にはなじまない性質のものであり,裁判所の司法審査の対象とはなり得ないとするのが判例である。

オ.憲法は,憲法の最高法規としての性格に鑑み,天皇又は摂政並びに国務大臣,国会議員,裁判官その他の公務員及び一般国民について,憲法を尊重し擁護する義務を負うことを明文で規定している。

1.ア
2.エ
3.ア,オ
4.イ,ウ
5.ウ,エ

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

記述 ア は妥当です。
憲法第 97 条です。


記述 イ ですが
衆議院議員定数不均衡訴訟(S51.4.14) によれば、選挙が違法であっても、選挙自体を無効とすると「明らかに憲法の所期しない結果を生ずる」ことになるから、いわゆる行政事件訴訟法31条の「事情判決の法理」を用いて、選挙自体は無効としないとされています。「選挙は無効であるとするのが判例である」わけではありません。記述 イ は誤りです。


記述 ウ ですが
百里基地訴訟(H1.6.20) の最高裁判例によれば、国の私法的行為は「国務に関するその他の行為」にあたりません。記述 ウ は誤りです。


記述 エ ですが
日米安保条約に関する 砂川事件判例(S34.12.16) によれば
「・・・条約は、主権国としての我が国の存立の基礎に極めて重大な関係を持つ高度の政治性を有するものであり、その内容が違憲か否かの判断は、純司法的機能を使命とする司法裁判所の審査には原則としてなじまず、一見極めて明白に違憲無効と認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外にある」とされています。

言い換えれば、一見極めて明白に違憲無効と認められる場合は、司法審査権の範囲内、つまり、司法審査対象となりえると読めます。「高度の政治性を有する場合・・・司法審査の対象とはなり得ない」わけではありません。記述 エ は誤りです。

記述 オ ですが
ほぼ憲法第 99 条の通りなのですが、最後の「及び一般国民について」は明文で規定されていません。記述 オ は誤りです。


以上より、正解は 1 です。

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