公務員試験 2019年 国家一般職(行政) No.13解説

 問 題     

労働基本権に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。ただし,争いのあるものは判例の見解による。

1.労働基本権の権利主体は勤労者であり,勤労者とは,労働組合法上の労働者,すなわち職業の種類を問わず,賃金,給料その他これに準ずる収入によって生活する者を指す。したがって,公務員は勤労者に含まれるが,現に職を持たない失業者は勤労者に含まれない。

2.労働基本権は,社会権として,国に対して労働者の労働基本権を保障する立法その他の措置を要求する権利であると同時に,自由権として,団結や争議行為を制限する立法その他の措置を国に対して禁止するという意味を持つ。また,労働基本権は私人間の関係にも直接適用される。

3.労働協約により,労働組合に加入しない労働者又は組合員でなくなった労働者の解雇を使用者に義務付けるユニオン・ショップ協定は,労働者の団結しない自由を侵害するものであるから,有効なものとはなり得ない。

4.憲法第28 条による労働者の団結権保障の効果として,労働組合は,その目的を達成するために,組合員に対する統制権を有しているが,この統制権が及ぶのは,労働組合の経済的活動の範囲内に限られており,労働組合の政治的・社会的活動には及ばない。

5.憲法第28 条は団体行動をする権利を保障しており,団体行動とはストライキその他の争議行為をいう。労働組合が同条によって保障される正当な争議行為を行った場合,刑事責任は免責されるが,民事上の債務不履行責任や不法行為責任は免責されない。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

選択肢 1 ですが
現に就業していると否とを問わないから、失業者も勤労者であると解されています。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当です。
労働基本権についての記述です。

選択肢 3 ですが
ユニオン・ショップ協定がある場合、労働組合に加入しない者や、労働組合からの脱退者や除名者を会社側が解雇するのは一般に有効とされています。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
三井美唄労組事件(S43.12.4) の最高裁判例によれば、労働組合の統制権は、目的達成のために必要であり、かつ、合理的な範囲内において、統制権を有します。そして、労働組合が利益代表を議会に送り込むための選挙活動をすることや、そのために組合を挙げて選挙活動を推進することなどについて、別段、法の禁ずるところとはいえないとされています。「統制権が・・・政治的・社会的活動には及ばない」わけではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
正当な争議行為であれば、刑事責任だけでなく、民事責任も負いません。ちなみに使用者は、正当な争議行為を理由に、組合員に不利益な扱いをしてはいけません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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