公務員試験 2019年 国家一般職(行政) No.11解説

 問 題     

思想及び良心の自由に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。ただし,争いのあるものは判例の見解による。

1.国家権力が,個人がいかなる思想を抱いているかについて強制的に調査することは,当該調査の結果に基づき,個人に不利益を課すことがなければ,思想及び良心の自由を侵害するものではない。

2.企業が,自己の営業のために労働者を雇用するに当たり,特定の思想,信条を有する者の雇入れを拒むことは許されないから,労働者の採否決定に当たり,その者から在学中における団体加入や学生運動参加の有無について申告を求めることは,公序良俗に反し,許されない。

3.市立小学校の校長が,音楽専科の教諭に対し,入学式における国歌斉唱の際に「君が代」のピアノ伴奏を行うよう命じた職務命令は,そのピアノ伴奏行為は当該教諭が特定の思想を有するということを外部に表明する行為と評価されることから,当該教諭がこれを明確に拒否している場合には,当然に思想及び良心の自由を侵害するものであり,憲法第19 条に違反する。

4.特定の学生運動の団体の集会に参加した事実が記載された調査書を,公立中学校が高等学校に入学者選抜の資料として提供することは,当該調査書の記載内容によって受験者本人の思想や信条を知ることができ,当該受験者の思想,信条自体を資料として提供したと解されることから,憲法第19 条に違反する。

5.他者の名誉を毀損した者に対して,謝罪広告を新聞紙に掲載すべきことを裁判所が命じることは,その広告の内容が単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するにとどまる程度のものであれば,その者の良心の自由を侵害するものではないから,憲法第19 条に違反しない。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが
憲法 19 条「思想及び良心の自由は,これ を侵してはならない。」より、沈黙の自由が保障されていると考えられています。個人に不利益なくとも、強制的な調査は許されません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
三菱樹脂事件に関する最高裁判例によれば、特定の思想、信条を理由として雇入れを拒むことは違法ではないとしています。(H26no11 ア)。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
日野「君が代」伴奏拒否訴訟に関する最高裁判例における多数意見によれば、ピアノ伴奏行為は、思想の表明と評価することはできないとし、その他の理由もふまえ、ピアノ伴奏を命じた職務命令が憲法第 19 条には違反しないと示しました。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
麹町中学校内申書事件に関する最高裁判例によれば、調査書の記載は、思想信条そのものを記載したものでないことは明らかであり、記載内容から思想信条を了知しうるものではないとして、憲法 19 条に反しないと示しました。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
謝罪広告事件に関する記述です。

以上より、正解は 5 です。

コメント