公務員試験 2019年 国家一般職(行政) No.10解説

 問 題     

行政活動の能率と評価に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.行政相談は,総務大臣から委嘱された行政相談委員が,国民から国の行政全般についての苦情や意見,要望を受け付け,中立・公正の立場から関係行政機関に必要なあっせんを行い,その解決や実現を促進し,それらを通じて行政の制度と運用の改善を図るための仕組みである。

2.政策評価制度は,市町村レベルでの導入が先行して進められ,三重県津市の事務事業評価システム,北海道札幌市の政策アセスメント,静岡県静岡市の業務棚卸表等が知られている。そうした実践を受けて,平成29(2017)年に国レベルで政策評価制度を導入する「行政機関が行う政策の評価に関する法律」が成立した。

3.政策評価では,投入した費用であるインプット,行政の活動量を示す結果であるアウトカム,実際に社会が変化したかという成果であるアウトプットが主な指標となっている。結果であるアウトカムは,経済情勢等の要因も影響して変化するため,政策によるものかどうかの判断が難しいとの指摘がある。

4.G.W.ブッシュ政権下の米国連邦政府では,D.ラムズフェルド国防長官の就任に伴って,年々の予算編成過程で費用便益分析(費用効果分析)の手法を活用しようとする計画事業予算制度(PPBS: Planning, Programming, and Budgeting System)が導入された。

5.C.リンドブロムは,問題を根本的に解決する政策案の検討が重要であり,実現可能性の有無にかかわらず,政策案を網羅的に比較し,検討する必要性があるとする増分主義(インクリメンタリズム)を提唱し,その中から最適なものを選択すると,政策実施後の評価が最小限の費用や時間で行われるとした。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1 は妥当です。
行政相談委員(ボランティア)は全国に 5000 人、各市町村 1 名以上います。例えば月 1 回 2 時間 無料・予約なしといったスケジュールで相談できます。本試験時点において、全国で年間 80000 件程度の相談が受け付けられています。

選択肢 2 ですが
自治体における行政評価の先駆けとして、三重県の事例があげられます。その後、政府における政策評価制度に関しても 2001 年(H13年)に「行政機関が行う政策の評価に関する法律」が成立し、導入されました。平成 29(2017) 年ではありません。正確に知らなくても、ここまで最近になってようやく導入されたのではなく、もう少し早くからやっているだろうと判断できるのではないでしょうか。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
アウトプットが行政の活動量で、実際の社会の変化、成果がアウトカムと対応します。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
PPBS は、1961年のマクナマラ国防長官の就任とともに国防総省に、さらに 65 年にはジョンソン大統領により全省庁に導入された予算制度です。理論的にはきわめて合理的な制度であるにもかかわらず、行政部の権限がますます強大化することを懸念する議会の協力を欠いたことなどの理由により、71 年にはニクソン政権のシュルツ予算管理庁長官の通達により廃止されました。ブッシュ政権下、ラムズフェルド国防長官就任に伴って導入された制度ではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
リンドブロムのインクリメンタリズムは、実現可能な三つ程度の選択肢を摘出して比較するにとどめ、短期間での決定を重視することにより、漸進的に政策の変更を繰り返すという政策形成過程のモデルです。(H29no8)。「政策案を網羅的に比較」ではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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