R5年 汚水処理特論 問11 問題と解説

 問 題     

下図に示すような標準活性汚泥法で以下の条件で処理している。汚泥滞留時間を10日で運転するための余剰汚泥引き抜き量(m3/日)はいくらか。

運転条件

  • 流入水量:200m3/日
  • 曝気(ばっき)槽容積:50m3
  • 曝気槽MLSS:2000mg/L
  • 返送汚泥率:0.5
  • 沈殿池と配管内の汚泥量:40kg
  • 処理水SS:5mg/L
  1. 0.8
  2. 1.0
  3. 1.6
  4. 2.2
  5. 2.8

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説    

本問は以下の二つの条件があるため、難易度の高い問題です。

  1. 過去の類題では問題文で与えられていることの多い「余剰汚泥のSS濃度」が不明である
  2. 過去の類題では存在しない(または無視できるほど小さい)「沈殿池と配管内の汚泥量」が大きな値である

汚泥滞留時間を利用した計算問題は頻出ですが、個人的にはこの問題は捨て問題にしてしまっても仕方ないと思います。類題として、R2年 問13H28年 問11が挙げられますが、これらは解けるように対策しておいてください。

参考までに、以下に解説を示します。

まず、問題文にある情報を図に書き込むと、下図のように表すことができます。なお、最終的に求めたい余剰汚泥引き抜き量をx[m3/日]としています。

計算の進め方には複数の方法がありますが、問題文で汚泥滞留時間が与えられているので、一例として本解説ではまずはここから考えていきます。

汚泥滞留時間(SRT)はその名の通り、汚泥が槽内に滞留している時間(単位は「日」を使うことが多い)のことで、以下の式で表すことができます。

解説の冒頭で書いた通り、本試験の場合は沈殿池と配管内の汚泥量を無視できる場合が多いのですが、今回はそうはいきません。

上で示した図と(1)式を照らし合わせ、各パラメータを次のように整理します。

  1. SRT [日]:問題文より10日
  2. 𝑴𝑳𝑺𝑺量 [𝒌𝒈]:曝気槽の容量とMLSS濃度の積
  3. 沈殿池と配管内の汚泥量 [𝒌𝒈]:問題文より40kg
  4. 余剰汚泥量 [𝒌𝒈∕日]:余剰汚泥の水量とSS濃度の積だが、SS濃度が不明
  5. 処理水の汚泥量 [𝒌𝒈∕日]:処理水の水量とSS濃度の積

よって、上記1.と3.は既知なので、続いて2.と5.を計算していきます。その後、4.について考えます。

曝気槽のMLSS量は、上図から次のように計算することができます。ちなみに、MLSS濃度の[mg/L]という単位はそのまま[g/m3]に変換して考えています。mgとgは1000倍、Lとm3も1000倍の関係なので、単位を変換しても数値は変わりません。

同様に、処理水の汚泥量は次のように算出できます。

そして、余剰汚泥量は余剰汚泥の水量とSS濃度の積で求めることができますが、現状では余剰汚泥のSS濃度がわかりません。しかし、余剰汚泥のSS濃度は返送汚泥のSS濃度と同じはずなので、以下の計算によって返送汚泥のSS濃度を求め、その計算結果を余剰汚泥のSS濃度として使います。

よって、余剰汚泥量は次のようになります。

最後に、(2)式、(3)式、(5)式を(1)式に代入してxについて解けば、求めたいxを算出することができます。

以上から、正解は(4)となります。

 

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