R4年 水質有害物質特論 問14 問題と解説

 問 題     

ふっ素及びその化合物の検定法に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 試料を濃縮する場合は、弱アルカリ性で行う。
  2. 試料を水蒸気蒸留する場合は、強酸性で行う。
  3. 水蒸気蒸留は、二酸化けい素を共存させて行う。
  4. 水蒸気蒸留は90~100℃で行う。
  5. ふっ素化合物を水蒸気蒸留によってふっ化物イオンとした後、ランタン-アリザリンコンプレキソン吸光光度法を適用する方法がある。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説    

本問の各選択肢は、ふっ素分析における水蒸気蒸留の細かい記述が書かれています。そのため、消去法で解こうとするとやや難易度が高いと感じるかもしれません。しかし、誤りの選択肢が明確なので、正解するだけならさほど難しい問題ではありません。

(1)で、水蒸気蒸留の前処理として、試料に水酸化ナトリウム溶液とフェノールフタレイン溶液を加え、弱アルカリ性条件下(液の色で判断)で濃縮します。これは、濃縮の過程でふっ素及びその化合物を失わないための措置です。よって、(1)は正しいです。

(2)と(3)で、試料中のふっ素化合物には様々な形態が含まれている可能性があり、それぞれの分子・イオン・錯体で価数や沸点も様々です。そのため、水蒸気蒸留を行う際には全てのふっ素化合物を揮発させやすい形に変える必要があります。

それに必要な条件が、(2)の「強酸性」と(3)の「二酸化けい素の共存」です。これらの条件下で水蒸気蒸留を行うことで、全てのふっ素化合物をテトラふっ化ケイ素(SiF4)として留出させることができます。よって、(2)と(3)は正しいです。

(4)で、水蒸気蒸留は「90~100℃」ではなく、「140~150℃」で行います。この正確な数値を覚えていなくても、90~100℃では水の沸点以下なので、きちんと水蒸気蒸留が行なえないことが容易に予想できます。よって、(4)の記述が誤りです。

また、100℃を少し超えた程度で水蒸気蒸留した場合にも、一部の水蒸気が水に変わって試料溶液の酸濃度が下がってしまい、(2)と(3)の解説に書いた反応が不完全になってしまうおそれがあります。そのため、水蒸気蒸留の温度は140~150℃程度を維持する必要があります。

(5)は重要事項として特に押さえておくべき知識です。ふっ素及びその化合物の検定方法として定められているのは、以下の4つです。そのため、(5)は正しいです。

  • ランタン-アリザリンコンプレキソン吸光光度法
  • イオン電極法
  • 流れ分析法
  • イオンクロマトグラフ法

以上から、正解は(4)となります。

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