R3年 汚水処理特論 問15 問題と解説

 問 題     

嫌気処理法に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 発酵槽の攪拌(かくはん)方式には、表面攪拌式と水中攪拌式がある。
  2. メタン発酵法における高温発酵法の最適温度は、36~38℃程度である。
  3. メタン発酵の中間生成物である低級脂肪酸は、高濃度ではメタン生成の阻害の原因となる。
  4. メタン発酵槽に流入する原水中に高濃度の糖類が含まれていると、その分解により過剰のアンモニアが生成し、メタン生成の阻害となる。
  5. UASBでは、担体を投入し、上向流による排水の一過式流入、発生ガスの上昇による穏やかな攪拌下で、担体に付着した嫌気性微生物によって処理を行う。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説    

(1)で、嫌気処理法における発酵槽の攪拌方式は以下の2種類です。

  • 機械攪拌方式:ポンプや攪拌機を使って攪拌する
  • ガス攪拌方式:生成ガスの一部を液中に吹き込む

よって、(1)は誤りです。(1)には表面攪拌式とありますが、嫌気処理に酸素は不要なので、水面をかき回す必要はありません。

(2)は簡単に判断できると思いますが、高温発酵法と書いてあるのに36~38℃程度では普通の温度すぎておかしいです。正しい最適温度は以下の通りです。

  • 中温発酵法:36~38℃程度
  • 高温発酵法:53~55℃程度

(3)は正しい文章です。メタン発酵の中間生成物である低級脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)の濃度が高い場合、メタン生成菌に阻害を及ぼします。特に、プロピオン酸はメタン発酵の阻害の程度が大きいです。

(4)で、アンモニア(NH3)が過剰に発生する原因は窒素原子(N)ですが、糖類に窒素が含まれていることはあまりないです。成分中に窒素を多く含むのは、「糖類」ではなく「タンパク質」です。タンパク質が多いと分解されてアンモニアとなり、アンモニアによって発酵阻害作用が生じます。

(5)で、UASBはUp-flow Anaerobic Sludge Blanketの頭文字を取ったもので、上向流式嫌気汚泥床と訳されます。

UASBは、上向流による排水の一過式流入、発生ガスの上昇による穏やかな攪拌下で、自己造粒化したグラニュール汚泥を用いて嫌気処理を行います。ビール工場の排水など、高濃度有機排水の処理に適しているのが特徴です。

(5)に書かれているような担体は使用しないため、(5)の記述は誤りです。

以上から、(3)が正解となります。

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