R3年 大規模大気特論 問1 問題と解説

 問 題     

ダウンウォッシュが起きない場合の煙の上昇に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 排煙は通常、煙突の真上の有効煙突高さから、水平方向に風で運ばれながら拡散するものとみなされる。
  2. 実煙突高さに煙の上昇高さを加えたものが有効煙突高さである。
  3. 上昇高さは、一般に排出口における運動量と浮力の効果を見積もった上昇式で計算される。
  4. 上昇式によっては、浮力の効果を無視している場合もあるが、運動量の効果は必ず含まれる。
  5. 風速は、常に上昇高さを小さくする効果を持つ一方、無風に近いときは有風時と異なる体系の上昇式が必要になる。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説    

これはやや難しい問題です。悪問・奇問というわけではないので、余裕があれば押さえておきたい知識ですが、ご自身の学習状況や理解度によっては後回しにしても構わないと思います。

まず(2)を確認すると、この文章は有効煙突高さの用語の説明文となっているので、正しいです。

次に(3)で、上昇高さというのは、排煙自体の勢い(運動量)によって煙突から上に向かって吹き出る分(運動量上昇高さ)と、その煙が浮力によってさらに浮き上がる分(浮力上昇高さ)を併せたものを指す言葉です。よって、(3)も正しいです。

ここで(1)に戻り、排煙は煙突から勢いよく飛び出して、上昇高さの分だけ真上に上がります。この高さが、有効煙突高さです。これ以上は上がらずに、あとは風に流されて水平方向に拡散していくので、(1)も正しいです。

厳密に言えば、有効煙突高さに達する前に風の影響を受けて水平方向に流されることもありますが、それを計算に入れると複雑すぎてシミュレーションしづらくなるので、まずは有効煙突高さまで垂直に上がって、それから水平に拡散するものとみなすのが一般的です。

以上、(1)~(3)は基本的なところなので、押さえておきたいです。難しいのは、(4)、(5)です。

(4)に関して、ダウンウォッシュが起きない場合の煙の上昇式には、以下のようなものがあります。

  1. モーゼスとカーソンの式
  2. ブリッグスの有風時用の排ガス上昇式
  3. ブリッグスの無風時用の排ガス上昇式
  4. コンカウの式

上記4つの式を全て正確に覚える必要はないと思いますが、モーゼスとカーソンの式はこの中では出題頻度が高めなので、余裕があればH30年 問4の解説を確認しておいてください。

ここで、(3)の記述の通り、上昇高さは一般的に運動量と浮力の効果を見積もって計算します。ただし、必ずしもその両方を考慮するわけではありません。具体的には、上記4つの式はそれぞれ、運動量と浮力を以下のように扱っています。

  1. モーゼスとカーソンの式      :運動量と浮力の両方の効果を含む
  2. ブリッグスの有風時用の排ガス上昇式:浮力の効果のみ含む
  3. ブリッグスの無風時用の排ガス上昇式:浮力の効果のみ含む
  4. コンカウの式           :浮力の効果のみ含む

以上から、(4)の「浮力の効果を無視している場合もあるが、運動量の効果は必ず含まれる」が誤りで、正しくは「運動量の効果を無視している場合もあるが、浮力の効果は必ず含まれる」です。

(5)で、強い風が吹けば排煙が上に上がるよりも横に流されていくので、上昇高さは小さくなります。よって、(5)の前半部分は正しいです。

また、後半部分について、(4)の解説でブリッグスの排ガス上昇式を有風時用/無風時用と分けて表記しているように、異なる式を用いたほうが実態に合った計算が行えます。よって、後半部分も記述の通りなので、(5)は正しい文章です。

以上から、正解は(4)となります。

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