R2年 汚水処理特論 問16 問題と解説

 問 題     

アナモックスプロセスに関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 嫌気性条件下における生物学的窒素変換反応である。
  2. 有機物を必要としない独立栄養型のプロセスである。
  3. 消費される窒素は全量が窒素ガスへ変換される。
  4. アンモニア態窒素の約半量を亜硝酸態窒素に酸化させればよいので、従来の硝化脱窒素法に比べて必要酸素量が小さい。
  5. 従来の硝化脱窒素法に比べて汚泥発生量が小さい。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説    

アナモックス(Anammox)は、「Anaerobic Ammonia Oxidation」の略で、直訳すると「嫌気性アンモニア酸化」となります。アナモックス反応は汚水処理技術としてはかなり新しく開発された方法です。近年頻繁に出題されている重要テーマなので、しっかり勉強しておきたいところです。

従来の生物的硝化脱窒素法では、アンモニア態窒素を硝化して硝酸態窒素とし、これを脱窒素により窒素ガスに変えていました。硝化工程で独立栄養細菌を使い、脱窒素工程において従属栄養細菌を使っていたので、それぞれ別の槽が必要となります。

一方、このアナモックス反応であれば、嫌気性の独立栄養細菌によって、アンモニア態窒素や亜硝酸態窒素を直接(硝酸態窒素を経ずに)窒素ガスに変えるため、反応槽が1つで済むというメリットがあります。

また、上記では「硝酸態窒素を経ずに」と書きましたが、反応の副生成物として硝酸態窒素が少量(生成物の1割程度)つくられます。ただし、これらの生成物(窒素ガスと硝酸態窒素)は同じ反応槽で出来上がるので、段階的に反応させる従来の生物的硝化脱窒素法とは意味合いが異なります。

汚泥発生量については、アナモックス反応は生物的硝化脱窒素法に比べて工程数が少ない上に、好気性の細菌を使わないので、汚泥発生量が少なくなります。

参考までに、以下にアナモックス反応の実験式を記載します。複雑な化学反応式なので必ずしも覚えておく必要はありませんが、知っていれば選択肢を減らす役に立つ場合もあるので、余裕があれば気に留めておいてください。ただし、係数は暗記しなくて大丈夫です。

以上のアナモックスの説明を踏まえて、選択肢を見ていきます。

(1)はまさに記述の通りです。アナモックスは「嫌気性アンモニア酸化」を略した用語なので、嫌気性条件下における生物学的窒素変換反応といえます。

(2)も正しい記述です。アンモニア態窒素や亜硝酸態窒素といった無機物を窒素ガスに変換するため、有機物を必要としない独立栄養型のプロセスです。

(3)が誤りの記述です。上記の説明文や化学反応式にあるように、この反応の主生成物は窒素ガスですが、副生成物として少量の硝酸態窒素も生じます。よって、消費される窒素の全量が窒素ガスになるわけではありません。

(4)に関して、従来の方法だとアンモニア態窒素を硝化して硝酸態窒素とし、これを脱窒素により窒素ガスに変えていました。一方、アナモックスだとアンモニア態窒素を半分くらい亜硝酸態窒素にして、この亜硝酸態窒素と残ったアンモニア態窒素とを反応させて窒素ガスに変換します。よって、(4)も正しいです。

(5)は汚泥発生量の話ですが、アナモックス反応は生物的硝化脱窒素法に比べて工程数が少ない上に、好気性の細菌を使わないので、汚泥発生量が少なくなります。よって、(5)も正しい記述です。

以上から、正解は(3)です。

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