R1年 大規模大気特論 問5 問題と解説

 問 題     

煙の上昇式と地表面完全反射を仮定した、基礎的な正規形プルームモデルによる大気汚染物質の拡散計算に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 周辺建造物の影響を受ける低い煙突では、正しい計算ができない。
  2. 無風に近い条件では、正しい計算ができない。
  3. 数kmの範囲内に山や谷がある、地形の複雑な地域には適用できない。
  4. 分子量が空気の平均分子量(約29)の2倍以上ある重いガスには適用できない。
  5. NOxとの反応や環境大気中二次生成のある、オゾンのような反応性物質には適用できない。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説    

正規形プルーム拡散式は以下の式で表すことができます。この式は重要(頻出)なので、可能であれば記憶しておくと便利です。

  • C:煙流中心軸直下の地上濃度 [ppm]
  • Q:汚染物質排出量 [m3/s]
  • u:風速 [m/s]
  • σy:水平拡散幅 [m]
  • σz:鉛直拡散幅 [m]
  • x:煙突から風下方向の距離 [m]
  • y:xと直角水平方向の距離 [m]
  • z:地面から鉛直上方の距離 [m]
  • He:有効煙突高さ [m]

以上を踏まえて選択肢を確認していきます。

(1)と(3)に関して、解説の冒頭でも書いたように、この式は平坦地域の高煙突からの煙の拡散を想定した式です。よって、周囲に障害物があって平坦ではない場所には適用しづらい式となっています。つまり(1)と(3)は正しいです。

(2)で、上式からわかるように、プルーム拡散式では分母に風速uがくるので、無風時は分母が0になってしまい計算できません。無風時にはプルーム拡散式ではなくパフ式を用いる必要があります。よって、(2)も正しいです。

(4)について、特にこのような決まりはないので、これが誤りであり正解の選択肢となります。

たとえば計算の対象とする物質が極端に重くて、ガスが拡散している途中で沈降して地面に着いてしまう場合などは別ですが、普通にほかのガスと同じように拡散する程度の物質であれば、この式を適用することができます。

適用できるかできないかの基準がはっきりと空気の何倍と決まっているわけではありませんが、プルーム拡散式はかなり広い範囲の物質で適用可能であると考えて大丈夫です。

よって、正解は(4)となります。

(5)に関して、これは物理的な拡散式なので、途中で化学反応が起こって対象物質が生成したり消滅したりすると計算が狂います。よって、このような場合にはプルーム拡散式は使えないので、(5)は正しい記述です。

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