H30年 水質有害物質特論 問2 問題と解説

カドミウム、鉛排水の処理に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. カドミウムとくえん酸や酒石酸などの有機酸との錯体は安定であり、水酸化物法での処理は困難である。
  2. 鉛とアンモニアとの錯体は安定であり、水酸化物法での処理は困難である。
  3. カドミウム排水を水酸化物法で処理する場合、塩化鉄(Ⅲ)を加えると共沈効果がある。
  4. キレート剤を含む鉛排水の処理には、Fe+Ca塩法による置換法が有効である。
  5. 鉛は両性金属のため、アルカリ性側でpHが高くなると再溶解が起こる。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説    

(2)に関連して、カドミウムイオンは有機酸やアンモニア、シアン化物イオンと安定した錯体を形成します。そのため、これらを水酸化物法での処理しようとしても水酸化物にならず、その処理は困難です。しかし、それはカドミウムの話であって、鉛の場合はこのような安定した錯体を形成しません。よって、これが誤りの記述です。

この問題はほかの選択肢も重要事項が書かれているため、ぜひ内容を確認しておいてください。

(1)について、有機酸は多くの金属と錯体を形成しますが、特にカドミウムとは強く結合し、安定した錯体を作ります。そこで、水酸化物法で処理しようとしても錯体からカドミウムを引き離すことができず、沈殿分離することができません。

(3)で、塩化鉄(Ⅲ)は優れた凝集剤であり、カドミウムと共沈処理するとカドミウムが効率よく処理できます。また、塩化鉄(Ⅲ)は鉛やほかの重金属にも有効で、多くの金属類に対して共沈処理が適用できます。

(4)に書かれているFe+Ca塩法は以下のような2段階の反応で構成されます(例として重金属を鉛Pbとしていますが、ほかの重金属でも同様です)。Fe+Ca塩法という名前の通り、1段階目でFeを、2段階目でCaを使っています。

  • 1段階目(酸性条件)

  • 2段階目(塩基性条件)

(5)について、鉛は両性金属なので、酸性条件で溶けるのはもちろんのこと、アルカリ性条件でも水に溶けます。両性金属といえば、アルミニウム、鉛、亜鉛、クロム、スズ、水銀などが挙げられます。

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