H30年 大規模大気特論 問3解説

気温の鉛直分布と大気安定度の関係に関する記述中、下線を付した箇所のうち、誤っているものはどれか。

気温の鉛直分布が下図の実線A-Bで表されるような強い(1)逓減(ていげん)分布であるとき、P0の気塊がP1へ移動すると、破線で示した(2)乾燥断熱減率に従って周囲の大気よりも(3)温度が高くなり、またP0からP2へ移動すると逆方向の変化が生じる。この状態を(4)熱的に安定という。実線A-Bと異なり、上空に向かって気温が高くなる場合を(5)逆転分布という。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説    

低層大気の乾燥断熱減率は0.0098℃/mです。これは重要事項として押さえておくべき数値ですが、大雑把に高度が100m上がると気温が約1℃下がる、と覚えても構いません。これが、問題の図で示されている破線部分のことです。

これが基準ですが、今回の問題では、この場所での高度と気温の関係は実線A-Bで表されるとのことです。破線が「今回注目している気塊」の高度と気温の関係、実線が「周囲の大気」の高度と気温の関係だと考えてください。

P0の気塊がP1へ移動したとき、上図を見ると同じ高度で比較した際、気塊のほうが周囲の大気よりも気温が高いことが読み取れます。温かい空気は上昇する性質があるので、この気塊はここに留まらず、上へと昇ろうとします。

反対にP0の気塊がP2へ移動したとき、気塊のほうが同じ高度の周囲の大気よりも気温が低いことが読み取れます。冷たい空気は下へと降りていく性質があるので、先程とは逆に、この気塊は下へと沈もうとします。

どちらにせよこの気塊は動こうとする(上昇または下降する)傾向が見られます。このような状態を「熱的に不安定」といいます。よって、(4)が誤りです。

ちなみに、周囲の大気の線(直線AB)が乾燥断熱減率の傾き(0.0098℃/m)よりも大きく傾いている場合、それなら熱的に安定な状態が作られます。興味があったらそのパターンも作図してみてください。

コメント