H30年 大規模水質特論 問10 問題と解説

食料品製造業からの排水処理に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 水質汚濁防止法施行令において定められている特定施設に、食料品製造業の施設は含まれていない。
  2. 食料品製造業のほとんどすべての工場・事業場には、水質汚濁防止法の一律排水基準が適用されている。
  3. ビール製造業では、醸造系からの廃液の混合排水のCOD濃度は、容器充塡(じゅうてん)工程からの廃液のCOD濃度より高い。
  4. 活性汚泥法により処理されているビール製造業の排水処理工程の前段にUASBを導入すると、余剰汚泥発生量は多くなるが、曝気(ばっき)動力は低減できる。
  5. 清涼飲料水製造工場からの排水の主要な処理対象物質はSSであるので、凝集沈殿処理で対応できる。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説    

(1)について、食料品のほとんどは有機物なので、それを製造する過程でCODやBODが発生します。また、タンパク質などには窒素分も多く含まれるため、食料品製造業の排水は適切な処理が必要となります。よって、(1)の記述は不適で、食料品製造業の施設は特定施設に含まれています。

(2)で、ある程度以上の規模の工場・事業場には一律排水基準が適用されますが、実際には小規模の工場や事業場が多くあります。小規模のところには一律排水基準が適用されないので、(2)の「ほとんどすべて」という部分が誤りです。

(3)は、「醸造」と「容器充塡」を比べると、醸造は発酵などを行ってビールを作る工程なので、その廃液には有機分がかなり多く含まれていそうです。一方、容器充塡は出来上がったビールを容器に詰めるだけなので、廃液の量も有機分の濃度もそこまで大きくないと考えられます。よって、(3)が正しい記述です。

(4)で、ビール工場の排水処理としてよく行われるのが「UASB法+活性汚泥法」です。UASBは高濃度有機排水の処理に有用ですが、基準値以下まで一気に下げることは難しいです。そのため、UASBで大雑把にCODを除去して、後処理として活性汚泥法などを行うのが一般的です。

(4)にはそのことが書かれていますが、UASBを前段に入れることで後段の活性汚泥法での負担がかなり軽くなるため、活性汚泥法での余剰汚泥発生量は少なくなり、曝気動力も低減できます。よって、(4)の「余剰汚泥発生量は多くなる」が誤りです。

(5)で、清涼飲料水工場からの排水中には糖質や有機酸などの有機物が多く含まれています。よって、排水の処理対象物質にはSSもありますが、むしろBODのほうが問題になります。そのため、排水処理は(5)に書かれている凝集沈殿ではなく、「ラグーン方式」または「活性汚泥法」が採用されます。

ちなみに、ラグーン方式は滞留時間が長く、負荷変動を緩和することができるので、水質変動が大きい清涼飲料工場の排水処理に向いています。

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