H29年 水質有害物質特論 問9 問題と解説

トリクロロエチレン排水の処理に関する記述として、誤っているものはどれか。

  1. 曝気により揮散し、排水から分離できる。
  2. 活性炭吸着法の欠点は、吸着量が少ないことである。
  3. 共沈法は、ごく微量まで除去できる方法として有効な手段である。
  4. 酸化分解法では、適切な条件下で酸化すると、二酸化炭素と塩化物イオンに分解できる。
  5. トリクロロエチレンを分解する能力を持つ微生物は、自然環境中に生息している。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説    

トリクロロエチレンやテトラクロロエチレンなどの有機塩素化合物の排水処理方法は、主に以下の4つです。

  • 揮散法
  • 活性炭吸着法
  • 酸化分解法
  • 生物分解法

それぞれの選択肢の解説は参考として以下に記載しますが、答えの選択肢を選ぶだけなら、上記の4つが選択肢の(1)、(2)、(4)、(5)と対応するため、トリクロロエチレン排水には使われない(3)の共沈法が誤りの選択肢と判断することができます。

(1)は上記の揮散法の説明なので、これは正しいです。

(2)も正しい記述で、活性炭吸着法は吸着量が少ないことが欠点となります。一方で利点としては、使用する活性炭の量さえ惜しまなければ、有機塩素化合物(トリクロロエチレンなど)をほぼ完全に取り除くことができます。

(3)について、上記の4つの方法に共沈法がなく、トリクロロエチレンの処理に共沈法は使われないため、これが誤った選択肢です。一般的に、共沈法は極性の高い複数のものを結合させて難溶性塩にして沈殿除去するものです。多くの金属類の除去などには有効な手段ですが、極性の小さいトリクロロエチレンでこの方法は用いられません。

(4)で、酸化分解法での酸化の仕方はいくつかありますが、過マンガン酸カリウムが使われることが多いです。トリクロロエチレンと過マンガン酸カリウムとの反応は次のようになります。

よって、CO2が発生し、また、上記化学反応式のKClやHClは水中ではK+とCl、H+とClに分かれているため、(4)も正しい記述です。

(5)に関して、生物分解法で用いられる微生物の多くは自然環境中に生息しています。トリクロロエチレンも例外ではないため、(5)も正しいです。

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