H27年 水質概論 問7 問題と解説

エスチャリーの物理的な循環について、次の記述のうち誤っているものはどれか。

  1. エスチャリーは、塩分分布から、正のエスチャリー、負のエスチャリー、中立のエスチャリーの三つの型に分類できる。これは水面からの蒸発量と陸からの淡水流入量の大小関係から決まる。
  2. 北半球において、均質型のエスチャリーでは、反時計回りの水平循環が生じる。
  3. エスチャリーでは潮汐によって潮流が生成される。潮汐は多くの周期成分からなるが、M2、S2、K1、O1の周期成分が大きく、主要4分潮と呼ばれている。
  4. エスチャリーの物理的な循環は、エスチャリー循環(密度流)、潮流、吹送流などで決定される。
  5. 大阪湾、伊勢湾、東京湾などは、負のエスチャリーに分類される。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説    

エスチャリーとは半閉鎖性内湾のことで、(5)にある大阪湾、伊勢湾、東京湾のような海域のほか、感潮河川もエスチャリーに含みます。これは(1)の通り、塩分分布によって正、負、中立に分かれ、それは水面からの蒸発量と陸からの淡水流入量の大小関係から決まります。

どういうことか説明するために、まずは河川と海域の間の淡水と海水の境界線あたりを考えてください。この境界線あたりの「水面からの蒸発量」が「陸からの淡水流入量」よりも少なければ、河川側(淡水)から海域側(海水)の方向へと水が流れるので、これを「正のエスチャリー」といいます。

逆に、「水面からの蒸発量」が「陸からの淡水流入量」よりも多いと、この境界線上の水量が減るので、河川側(淡水)からも海域側(海水)からも水が流れこむことになります。河川側と海域側の水の流れる向きが全く反対になる(双方が境界上に向かって流れこむ)ため、これを「負のエスチャリー」と呼びます。

ちなみに、「水面からの蒸発量」と「陸からの淡水流入量」とのバランスがちょうど取れていると、「中立のエスチャリー」になります。

正負の区別は簡単で、熱帯域のように水面からの蒸発量が多い場所では負のエスチャリーになりやすく、日本を含む多くの温帯域などでは、水面からの蒸発量が多くはないので、正のエスチャリーとなります。

よって、(5)は「負のエスチャリー」ではなく、正しくは「正のエスチャリー」です。

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