H23年 水質有害物質特論 問1 問題と解説

重金属排水の処理方法である置換法に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 重金属キレート化合物は、同一重金属イオンに1点のサイトで配位結合する構造となる。
  2. EDTAなどのアミノポリカルボン酸錯体は、比較的不安定な錯体で、中和で水酸化物が沈殿する。
  3. 置換反応と沈殿反応をともに酸性側で行う。
  4. Fe+Ca塩法では、キレート剤で封鎖されている重金属をCaで置換し、さらにこれをFeで沈殿させる。
  5. りん酸塩やけい酸塩などを含む重金属排水は、キレート剤を含む場合と同様の処理を行う。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説    

(1)で、重金属キレート化合物の特徴は、同一重金属イオンに2点以上のサイトで配位結合することです。キレートとは「カニのハサミ」を意味する言葉ですが、カニが両手で重金属をはさんでいるイメージです。

(2)で、アミノポリカルボン酸錯体は、比較的安定な錯体です。そのため、中和処理を施しても水酸化物にならず、沈殿しません。

(3)で、置換反応は酸性で合っていますが、沈殿は中性もしくはアルカリ性のことが多いです。重金属の多くは酸性下で水に溶ける(イオン化する)ので、まずはそうしてから薬剤と反応させます。そうして難溶性の水酸化物などができたら、難溶解性物質が安定でいられる中性~アルカリ性にして沈殿させます。

(4)に関して、Fe+Ca塩法は以下のような2段階の反応で構成されます(例として重金属を鉛Pbとしていますが、ほかの重金属でも同様です)。Fe+Ca塩法という名前の通り、1段階目でFeを、2段階目でCaを使っています。

1段階目(酸性条件)

2段階目(塩基性条件)

よって、最初に重金属がFeと置換し、その後、塩基性条件下でCaによって重金属を水酸化物として沈殿させているので、(4)の記述だとFeとCaが逆になっています。

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