問 題
1990年代以降、全球平均の大気中濃度が急激に減少したガスはどれか。
- 四塩化炭素
- 1,1,1‒トリクロロエタン
- HFC‒134a
- 六ふっ化硫黄
- HCFC‒22
解 説
選択肢(1)~(3)、(5)にある物質は、冷媒や溶剤として使われている(使われていた)物質です。
歴史的経緯としては、冷媒として使い勝手の良かったフロンがオゾン層を破壊するとわかって、1987年、モントリオール議定書の採択によって特定フロンの生産や使用を段階的に制限・禁止していくことが決まりました。
より具体的には、オゾン層を破壊する能力の高い四塩化炭素やCFC(クロロフルオロカーボン)は2009年までに全廃、オゾン層を破壊する能力が比較的低いHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)は2020~2030年までに全廃となります。
その代わりに登場したのが代替フロンと呼ばれるHFC(ハイドロフルオロカーボン)です。これは塩素を含んでいないので、オゾン層を破壊しません。
しかし、CO2とは比べ物にならないほど強力な温室効果ガスなので、これはこれで地球温暖化防止の観点から望ましくないといえます。よって、最近はノンフロン製品が増えてきています。
以上をまとめると、次のようになります。
- CFC(クロロフルオロカーボン):強力なオゾン層破壊物質
- HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン):CFCほどではないがオゾン層破壊物質
- HFC(ハイドロフルオロカーボン):オゾン層破壊に寄与しない物質。ただし強力な温室効果ガス
- ノンフロン:オゾン層破壊に寄与しない物質。温室効果もあまり高くない
ここで選択肢を確認していきます。
(1)の四塩化炭素と(2)の1,1,1‒トリクロロエタンはともにオゾン層破壊物質で、どちらもモントリオール議定書の締結によって先進国での全廃の決まった物質です。それから時間が経っているので、これらは大気中濃度が下がっていくはずのものです。
しかし、四塩化炭素は大気中での寿命が長いので、その大気中濃度が下がるのには長い時間を要します。一方、1,1,1‒トリクロロエタンは大気中寿命が短めなので、大気中の濃度が急激に減少しています。
よって、正解は選択肢(2)の1,1,1-トリクロロエタンとなります。
(5)のHCFC‒22は名前の通りHCFCの一種ですが、これらは四塩化炭素やCFCよりも遅れて全廃となる物質です。よって、HCFCの大気中濃度は、緩やかに上がっているか横ばいになっているのが現状です。今後しばらく経てば、徐々に下がっていくことが予想されます。
(3)のHFC‒134aはオゾン層を破壊しない代替フロンです。高い温室効果を持つことが問題になっているとはいえ、まだまだよく使用されている物質なので、大気中の濃度は上がり続けています。
最後に、(4)の六ふっ化硫黄はフロン類とは関係がなく、電子機器の絶縁材として多用されている物質です。これも代替フロンと同様に強力な温室効果を持つので、地球温暖化防止の観点から課題となっている物質です。
現段階ではたくさん使用されているので、大気中の濃度は上がり続けています。
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