H28年 水質有害物質特論 問12 問題と解説

有害物質の測定に関する記述として、不適切なものはどれか。

  1. ガスクロマトグラフ法は、農薬などの微量有機物の検定に用いられる。
  2. ガスクロマトグラフ質量分析法は、塩素化炭化水素、農薬などの含有量が微量で、かつ組成が複雑な試料の分析に有力な手段である。
  3. 高速液体クロマトグラフ法は、農薬に使われるパラチオンの検定に用いられる。
  4. イオンクロマトグラフ法は、ふっ素及びふっ素化合物、アンモニア及びアンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物の検定に用いられる。
  5. 薄層クロマトグラフ法は、アルキル水銀、有機りん化合物などの検定に用いられる。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説    

(3)に関して、パラチオンの検定に高速液体クロマトグラフ法を使えるかどうかはともかく、高速液体クロマトグラフ法がチウラムの測定に用いられることは覚えておいたほうがよいと思います。

これがチウラムの測定に使われるからといってパラチオンには使えないという理屈にはなりませんが、有害物質の測定として高速液体クロマトグラフ法を使う場合の測定対象はチウラムくらいしかないので、この試験の中では、高速液体クロマトグラフ法とチウラムは完全に結びつけてしまって大丈夫です。

よって、パラチオンでは高速液体クロマトグラフ法が使えないので、(3)が誤りの選択肢です。

また、パラチオンは聞きなじみがないかもしれませんが、これは有機りん化合物の一種です。有機りん化合物の検定方法として定められているのは、以下の3つです。

  • ガスクロマトグラフ法(GC法)
  • ナフチルエチレンジアミン吸光光度法
  • p-ニトロフェノール吸光光度法

以上から、正解は(3)です。

なお、(5)は不適切とは言えないものの、微妙な選択肢です。

薄層クロマトグラフは定性分析や混合物を分離するのには有用ですが、定量精度が低いため、ガスクロマトグラフ法や高速液体クロマトグラフ法のような機器分析法と同等な扱いをすることはできません。

(5)では「薄層クロマトグラフ法は、アルキル水銀、有機りん化合物などの検定に用いられる。」とありますが、あくまで妨害物質を除去するための前処理操作として用いられる程度です。

実際、アルキル水銀の検定法の一つに「薄層クロマトグラフ分離-原子吸光分析法」があります。また、有機りん化合物では「ガスクロマトグラフ法」や「ナフチルエチレンジアミン吸光光度法」の前処理として薄層クロマトグラフ分離を行う場合があります。

以上のように(5)も適切とは言い難いのですが、本問では(3)が明確に誤りであるため、このような場合は最も不適切である(3)を選ぶのが妥当です。

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