H28年 汚水処理特論 問13 問題と解説

活性汚泥法と比較したメタン発酵法の一般的な特徴として、誤っているものはどれか。

  1. 対象排水濃度は高い。
  2. 水理学的滞留時間は長い。
  3. 汚泥生成率は高い。
  4. MLSS濃度は高い。
  5. スタートアップに要する期間は長い。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説    

メタン発酵法には色々な種類がありますが、その中でも有名なのが上向流式嫌気汚泥床法(UASB法)です。UASB法はビール工場の排水処理で使われるなど、排水濃度が高いものを処理するのが得意です。よって、(1)は正しいです。

また、活性汚泥法は好気的な処理であり、メタン発酵法は嫌気的な処理です。一般的に好気処理のほうが嫌気処理よりも反応速度(有機物の分解速度)が速いため、メタン発酵法のほうが排水処理に時間が掛かります。よって、水理学的滞留時間を長くとらなくてはいけないため、(2)も正しいです。

活性汚泥法が有機物を最終的に汚泥として沈殿させるのに対し、メタン発酵法は有機物をメタンや二酸化炭素に変えます。メタンも二酸化炭素も気体なので、これらは生成すると曝気槽から空気中に抜けていくので汚泥にはなりません。

よって、メタン発酵法を使うと汚泥生成率が低くて済むというメリットがあるので、(3)の記述が誤っています。ちなみに、最近は発生したメタンを回収してエネルギーの原料にするというケースも増えてきています。

MLSSは曝気槽の中の活性汚泥の濃度のことです。結論から先に書くと、メタン発酵法(嫌気処理)のほうが活性汚泥法(好気処理)よりもMLSSを大きくできます。その理由は、酸素は水に溶けにくく、水中に溶けている酸素に限りがあるため、好気性細菌を曝気槽へたくさん入れ過ぎると酸素不足により好気性細菌が弱ったり死んだりしてしまうからです。

一方、メタン発酵法は酸素を用いないので、それを気にせず槽内に多くの嫌気性細菌を住まわせることができます。よって、(4)も正しいです。

スタートアップに関しては(2)の説明と重なりますが、好気処理のほうが嫌気処理よりもスムーズに反応が進行するため、スタートアップも早いです。よって、(5)も正しい記述です。

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