電験三種 R2年 電力 問10 問題と解説

 問 題     

次の文章は、架空送電線路に関する記述である。

架空送電線路の線路定数には、抵抗、作用インダクタンス、作用静電容量、( ア )コンダクタンスがある。線路定数のうち、抵抗値は、表皮効果により( イ )のほうが増加する。また、作用インダクタンスと作用静電容量は、線間距離Dと電線半径rの比D/rに影響される。D/rの値が大きくなれば、作用静電容量の値は( ウ )なる。

作用静電容量を無視できない中距離送電線路では、作用静電容量によるアドミタンスを1か所又は2か所にまとめる( エ )定数回路が近似計算に用いられる。このとき、送電端側と受電端側の2か所にアドミタンスをまとめる回路を( オ )形回路という。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  •   ア   イ     ウ     エ  オ
  1. 漏れ  交流  小さく  集中  π
  2. 漏れ  交流  大きく  集中  π
  3. 伝達  直流  小さく  集中  T
  4. 漏れ  直流  大きく  分布  T
  5. 伝達  直流  小さく  分布  π

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説    

( ア )に関して、架空送電線路の線路定数には、以下の4つの種類があります。

  • 導体抵抗
  • 作用インダクタンス
  • 作用静電容量
  • 漏れコンダクタンス

よって、( ア )には「漏れ」が入りますが、これはマイナーな部類の知識なので、知らなくても仕方ないと思います。その場合でも、( イ )~( オ )が正しければ正解できるようになっているので、気にしなくても大丈夫です。

( イ )で、表皮効果とは、導体に交流電流を流したとき、電流密度が導体の表面で高くなり、表面から離れるにつれ低くなっていく現象です。1本の太い導体だと表皮効果が顕著に現れ、導体の抵抗が高くなってしまいます。

よって、表皮効果が現れるのは交流だけなので、( イ )には「交流」が入ります。

( ウ )は、知識不要で解くことができます。

D/rの値が大きくなると作用静電容量はどうなるのか、という話ですが、例えば線間距離Dが∞である場合を考えてみてください。無限に離れたもの同士はもはや独立したものと考えられるので、作用し合うことはなく、作用静電容量は0になるはずです。

よって、D/rが大きいほど作用静電容量は小さくなると判断できるので、( ウ )には「小さく」が入ります。

( エ )に関して、直前にある「1か所又は2か所にまとめる」という文言が最大のヒントになっています。

作用静電容量の値を計算する際に、各々に散っている分のアドミタンスを全て考慮するのは大変なので、近似的に、1, 2か所にまとめて考えることが多いです。このようにアドミタンスをまとめた回路のことを「集中定数回路」といいます。よって、( エ )は「集中」となります。

( オ )に関して、( エ )ではアドミタンスを1, 2か所にまとめる話をしましたが、1か所にまとめた場合の回路を「T形回路」、2か所にまとめた場合の回路を「π形回路」といいます。

この名前の由来は、回路図の見た目です。以下の図を見ると、回路図自体が「T」の字や「π」の字になっているのがわかると思います。

よって、( オ )は2か所なので、「π」となります。

以上から、正解は(1)です。

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