電験三種 R2年 電力 問9 問題と解説

 問 題     

次の文章は、避雷器に関する記述である。

避雷器は、雷又は回路の開閉などに起因する過電圧の( ア )がある値を超えた場合、放電により過電圧を抑制して、電気施設の絶縁を保護する装置である。

特性要素としては( イ )が広く用いられ、その( ウ )の抵抗特性により、過電圧に伴う電流のみを大地に放電させ、放電後は( エ )を遮断することができる。

発変電所用避雷器では、( イ )の優れた電圧-電流特性を利用し、放電耐量が大きく、放電遅れのない( オ )避雷器が主に使用されている。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  •  ア   イ    ウ    エ       オ
  1. 波頭長  SF6   非線形  続流    直列ギャップ付き
  2. 波高値  ZnO  非線形  続流    ギャップレス
  3. 波高値  SF6   線形   制限電圧  直列ギャップ付き
  4. 波高値  ZnO  線形   続流    直列ギャップ付き
  5. 波頭長  ZnO  非線形  制限電圧  ギャップレス

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説    

( ア )には「波頭長」か「波高値」が入ります。波高値とは、電圧を表すsinカーブの波の高さ(電圧の最大値)のことで、波頭長とは、電圧が0の状態から波高値に達するまでにかかる時間のことです。

避雷器は電圧が高すぎるときに過電圧を抑制して、電気施設の絶縁を保護する装置なので、( ア )には「波高値」が入ります。

( イ )に関して、避雷器には酸化亜鉛(ZnO)素子や炭化けい素(SiC)素子が用いられますが、性能面で勝る酸化亜鉛素子が広く使われています。よって、( イ )は「ZnO」となります。

( ウ )に関して、「線形抵抗特性」と「非線形抵抗特性」の違いを説明します。

線形抵抗特性とは、電流と電圧が比例関係になるという、オームの法則に則った一定の抵抗値をもつ性質のことをいいます。

一方、非線形抵抗特性とは、電流と電圧が比例関係になく、オームの法則に従わないような抵抗の性質のことを指します。より具体的には、酸化亜鉛素子を使った避雷器は、電圧が小さいときには電流がほとんど流れず、電圧が一定値を超えたところで一気に電流が流れるような仕組みになっています。

これによって、避雷器は通常時には絶縁体として振る舞い、雷による異常電圧が生じたときには導体として振る舞います。よって、( ウ )には「非線形」が入ります。

( エ )の直後には「遮断」とありますが、電流は遮断できても、電圧を遮断するという言い方はしません。よって、日本語の文章から考えても、ここには「続流」が入ることがわかります。もちろん、これは日本語の試験ではないので、きちんと避雷器の機能の面からも解説します。

避雷器は、放電により大地に電流を流すことで過電圧を抑制します。この際、電圧が下がったあとも流れ続けてしまう電流のことを続流といいます。この電流(続流)は特に流す必要のないものなので、避雷器には、続流を早々に遮断して原状に復帰するのが機能が付いています。

以上から、( エ )は「続流」となります。

( オ )には「直列ギャップ付き」か「ギャップレス」が入ります。直列ギャップとは、続流を遮断するためのパーツのことで、これがあるかないかという話です。結論からいうと、発変電所用としてはギャップレスが多く使われ、配電用としては直列ギャップ付きが多く使われています。

よって、今回は発変電所用避雷器の話をしているので、( オ )には「ギャップレス」が入ります。

以上から、正解は(2)です。

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