電験三種 H30年 電力 問2 問題と解説

 問 題     

次の文章は、水車の比速度に関する記述である。

比速度とは、任意の水車の形(幾何学的形状)と運転状態(水車内の流れの状態)とを( ア )変えたとき、( イ )で単位出力(1kW)を発生させる仮想水車の回転速度のことである。

水車では、ランナの形や特性を表すものとしてこの比速度が用いられ、水車の( ウ )ごとに適切な比速度の範囲が存在する。

水車の回転速度をn[min-1]、有効落差をH[m]、ランナ1個当たり又はノズル1個当たりの出力をP[kW]とすれば、この水車の比速度nsは、次の式で表される。

通常、ペルトン水車の比速度は、フランシス水車の比速度より( エ )。

比速度の大きな水車を大きな落差で使用し、吸出し管を用いると、放水速度が大きくなって、( オ )やすくなる。そのため、各水車には、その比速度に適した有効落差が決められている。

上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

       (ア)        (イ)     (ウ)  (エ)     (オ)

  1. 一定に保って有効落差を 単位流量(1m3/s) 出力 大きい 高い効率を得
  2. 一定に保って有効落差を 単位落差(1m)   種類 大きい キャビテーションが生じ
  3. 相似に保って大きさを  単位流量(1m3/s) 出力 大きい 高い効率を得
  4. 相似に保って大きさを  単位落差(1m)   種類 小さい キャビテーションが生じ
  5. 相似に保って大きさを  単位流量(1m3/s) 出力 小さい 高い効率を得

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説    

水車の比速度とは、実物の水車を相似形で縮小した仮想水車に対し、1[m]の落差で1[kW]の出力を生じさせるときの回転速度[min-1]のことです。要するに、水車には様々な大きさや形状のものがありますが、その能力を比較するために単位高さ・単位出力あたりの回転速度を求めることで、基準を揃えた能力を知ることができる、というわけです。

よって、( ア )には「相似に保って大きさを」が、( イ )には「単位落差(1m)」が入ります。

また、この問題では問題文で比速度の式が示されていますが、もし式を与えられていなくても、重要公式として使えるようにしておくべきです。

比速度は大きすぎず小さすぎず、適正な範囲で運用することが重要です。この「適正な範囲」というのは水車の種類によって異なります。適正な比速度が大きい順に並べると、以下のような大小関係が成り立ちます。

(比速度:大) プロペラ水車 > 斜流水車 > フランシス水車 >ペルトン水車 (比速度:小)

よって、( ウ )には「種類」が、( エ )には「小さい」が入ります。

( オ )を含む文章を見ると、比速度の大きな水車を大きな落差で使用し、放水速度が大きくなっているという状況です。

このような場合、水中の気泡が大きな圧力で押しつぶされ、ランナなどの設備に衝撃を与えて損壊させるおそれがあります。この現象をキャビテーションといい、これは水車を痛める原因となるので、比速度や有効落差を適正な値に設定することで、キャビテーションを起こさないようにすることが重要です。

よって、( オ )には「キャビテーションが生じ」が入ります。

以上から、

  1. 相似に保って大きさを
  2. 単位落差(1m)
  3. 種類
  4. 小さい
  5. キャビテーションが生じ

となるので、正解は(4)です。

コメント