利尿薬は、尿量を増加させる薬です。尿量の増加は、体内循環血液量を減少させることになるので、高血圧、浮腫に用いられます。
利尿薬の作用点は大きく3つあります。近位尿細管、ヘンレのループ、遠位尿細管です。
利尿薬は作用機序に基づき、大きく 6 つに分類されます。
ⅰ.炭酸脱水酵素阻害薬
ⅱ.ループ利尿薬
ⅲ.チアジド系利尿薬
ⅳ.K保持性利尿薬
ⅴ.心房性ナトリウム利尿ペプチド
ⅵ.浸透圧性利尿薬
ⅰ.炭酸脱水酵素阻害薬
このタイプの代表的な薬は
・アセタゾラミド(ダイアモックス)
などが挙げられます。( )の中に書いたのは、商品名の一例です。
アセタゾラミドは、炭酸脱水酵素阻害薬です。近位尿細管の炭酸脱水酵素(CA:carbonic anhydrase)を阻害します。これにより、Na+ – H+ 交換系が抑制され、Na+ の再吸収が抑制されることにより利尿作用を示します。副作用として、低 K 血症があります。又、この薬は目薬として用いることにより、眼房水の生成抑制を促し眼圧を低下することから、緑内障の目薬としても用いられます。
ⅱ.ループ利尿薬
このタイプの代表的な薬は
・フロセミド(ラシックス)
・ブメタニド(ルネトロン)
・アゾセミド(ダイアート)
・ピレタニド(アレリックス)
などが挙げられます。
フロセミド、ブメタニド、アゾセミド、ピレタニドは、ループ利尿薬です。ヘンレのループにおける Na+ – K+ - 2Clー 共輸送系を抑制することにより利尿作用を示します。やはり副作用として低 K 血症があります。この点を改良し、K 保持を実現したのがトラセミドです。
ⅲ.チアジド系利尿薬
このタイプの代表的な薬は
・ヒドロクロロチアジド(ダイクロトライド)
・トリクロルメチアジド(フルイトラン)
などが挙げられます。
ヒドロクロロチアジド、トリクロルメチアジドは、チアジド系利尿薬です。この薬の特徴は、近位尿細管腔に分泌され、遠位尿細管前半部に作用するという点です。Na+ – Clー 共輸送系を抑制することにより利尿作用を示します。
ⅳ.K 保持性利尿薬
このタイプの代表的な薬は
・スピロノラクトン(アルダクトンA)
・カンレノ酸カリウム(ソルダクトン)
・エプレレノン(セララ)
・トリアムテレン(トリテレン)
などが挙げられます。
スピロノラクトン、カンレノ酸カリウム、エプレレノン、トリアムテレンは K 保持性利尿薬です。
作用機序ですが、トリアムテレン以外の薬は主に遠位尿細管に作用し、アルドステロン受容体に結合することにより、Na+ – K+ 交換系を抑制します。それにより利尿作用を、低 K 血症を引き起こすことなく実現する利尿薬です。
一方、トリアムテレンは、アルドステロンが分泌されていない人に対しても利尿効果を示すことが知られています。そのため、作用機序として、抗アルドステロン作用に加えて尿細管に対して直接作用があると考えられています。直接作用とは、具体的には Na+ チャネル遮断です。
ⅴ.心房性ナトリウム利尿ペプチド
このタイプの代表的な薬は
・カルペリチド(ハンプ)
などが挙げられます。
カルペリチドは、心房性ナトリウム利尿ペプチドです。心房性ナトリウム利尿ペプチドとは、心房細胞において顆粒として存在する一種のホルモンです。カルペリチドは、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP:Atrial natriuretic peptide)の薬理作用(血管拡張、利尿作用)を持つ薬です。血管平滑筋の ANP 受容体に結合し、膜結合型グアニル酸シクラーゼ活性化により cGMP 生成増加を促します。その結果、血管拡張、利尿作用といった作用を示します。
ⅵ.浸透圧性利尿薬
このタイプの代表的な薬は
・D-マンニトール
・イソソルビド(イソバイド)
などが挙げられます。
D – マンニトール、イソソルビドは、浸透圧性利尿薬です。これらの薬の投与により、血液の浸透圧が上昇することで、組織の水分が血中に吸引されます。その結果血流量が増加し、腎臓でろ過される血流量、すなわち糸球体ろ過量も増大します。
さらに、これらの薬は尿細管でほとんど再吸収されません。その結果、尿細管腔内においても尿の浸透圧が上昇し、再吸収が抑制されます。(あまり水が再吸収されると、ただでさえ浸透圧が高くなっているのに、高くなりすぎてしまうからです。)これらの作用の結果として、利尿作用を示します。
代表的な利尿薬をまとめると、以下の表になります。
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