胃・十二指腸潰瘍治療薬

胃、十二指腸潰瘍は、胃における攻撃因子と防御因子のバランスが崩れることにより発生します。攻撃因子とは、主に胃酸、ピロリ菌です。防御因子とは、主に粘液、プロスタグランジン(PG:prostaglandin)です。

胃酸生成には、アセチルコリン、ヒスタミン、ガストリン、セクレチンなどのホルモンが関与します。アセチルコリン、ヒスタミン、ガストリンは胃酸生成を促すホルモンです。セクレチンは、ガストリンの放出を抑制するホルモンです。間接的に胃酸の生成を抑制させます。

胃・十二指腸潰瘍治療薬は、大きく 9 つに分類されます。

ⅰ.M1 遮断薬
ⅱ.H2 遮断薬
ⅲ.抗ガストリン薬
ⅳ.PPI (Proton pump inhibitor)
ⅴ.制酸薬
ⅵ.防御因子増強薬
ⅶ.D2 遮断薬
ⅷ.PG (prostaglandin)製剤
ⅸ.ピロリ除菌

ⅰ.M1 遮断薬

このタイプの代表的な薬は
・ピレンゼピン(ガストロゼピン)
などが挙げられます。

ピレンゼピンは、M1 受容体遮断薬です。抗コリン作用を示します。ヒスタミン産生細胞の M1 受容体を選択的に遮断することにより、胃酸の生成を抑制します。

ⅱ.H2 遮断薬

このタイプの代表的な薬は
・シメチジン(タガメット)
・ラニチジン(ザンタック)
・ファモチジン(ガスター)
・ニザチジン(アシノン)
・ロキサチジン酢酸エステル(アルタット)
などが挙げられます。

シメチジン、ラニチジン、ファモチジン、ニザチジン、ロキサチジン酢酸エステルは、H2 受容体遮断薬です。H2 受容体とは、ヒスタミンの受容体の一種です。胃酸分泌が抑制されます。シメチジンは、あらゆる P450 を阻害することで、多くの薬物と相互作用することが知られています。

ⅲ.抗ガストリン薬

このタイプの代表的な薬は
・プログルミド(プロミド)
などが挙げられます。

プログルミドは、抗ガストリン薬です。胃酸を生成する壁細胞などのガストリン受容体を遮断することで胃酸分泌を抑制します。

ⅳ.PPI (Proton pump inhibitor)

このタイプの代表的な薬は
・オメプラゾール(オメプラール)
・ランソプラゾール(タケプロン)
・ラベプラゾール(パリエット)
などが挙げられます。

オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾールは、プロトンポンプ阻害薬(PPI:Proton pump inhibitor)です。プロトンポンプは、H+ 、K+-ATPaseとも呼ばれます。壁細胞で特異的に発現しており、胃酸分泌を行う実体です。PPI は、プロトンポンプを非可逆的に阻害することにより胃酸分泌を阻害します。

H2 拮抗薬と PPI が主に臨床では用いられます。違いとしては、作用発現が H2 拮抗薬の方が速いことや、PPI には適応により投与期間制限があるといった点があげられます。

ⅴ.制酸薬

このタイプの代表的な薬は
・炭酸水素ナトリウム(メイロン)
・酸化マグネシウム
・乾燥水酸化アルミニウムゲル
・合成ケイ酸アルミニウム
などが挙げられます。

炭酸水素ナトリウム、酸化マグネシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウムは制酸薬です。酸を中和することにより症状を緩和します。

ⅵ.防御因子増強薬

このタイプの代表的な薬は
・スクラルファート(アルサルミン)
・テプレノン(セルベックス)
・セトラキサート(ノイエル)
・レバミピド(ムコスタ)
・ゲファルナート(ゲファニール)
・エカベト(ガストローム)
・アズレン(アズノール)
などが挙げられます。

スクラルファート、テプレノン、セトラキサート、レバミピド、ゲファルナート、エカベト、アズレンは、防御因子増強薬です。主にプロスタグランジンの増加を促し、防御因子増強により症状の改善を図る薬です。胃粘膜修復、保護薬とも呼ばれます。

スクラルファートはアルミニウム塩であるため、抗菌薬であるニューキノロンとの相互作用が知られています。また、スクラルファートと甲状腺ホルモン製剤の相互作用による吸収低下も重要です。

ⅶ.D2 遮断薬

このタイプの代表的な薬は
・スルピリド(ドグマチール)
などが挙げられます。

スルピリドは、D2 受容体遮断薬です。D2 受容体遮断により、アセチルコリンの遊離促進 → 胃運動の促進を特に促します。これにより、胃内容物の停滞を改善し、潰瘍面と胃酸などの攻撃因子の接触時間を短縮して治癒を促進します。

ⅷ.PG (prostaglandin)製剤

このタイプの代表的な薬は
・ミソプロストール(サイトテック)
・エンプロスチル(カムリード)
などが挙げられます。

ミソプロストール、エンプロスチルは、プロスタグランジン(PG)製剤です。これらの薬は PG の誘導体です。胃酸分泌抑制作用に加え、粘液分泌促進作用を持ちます。NSAIDs 潰瘍に有効であるとして保険適応がある薬としてよく知られています。子宮収縮作用を持ち、妊婦に禁忌であることは要注意です。

ⅸ.ピロリ除菌

ピロリ除菌においては、PPI、アモキシシリン、クラリスロマイシンの3剤併用療法が標準的です。除菌失敗時は、二次除菌としてメトロニダゾールを用います。

代表的な胃・十二指腸潰瘍治療薬をまとめると、以下の表になります。

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