交感神経は、節前繊維はコリン作動性神経、節後繊維はアドレナリン作動性神経で構成されます。
交感神経系に作用する薬とは、アドレナリン受容体に作用したり拮抗したりする薬です。アドレナリン受容体には、α、β受容体があります。それぞれさらに分類されており、α1 、α2 、β1 、β2 受容体があります。(それぞれの受容体と、各器官の反応に関しては、生化学まとめました 自律神経系 参照)
アドレナリン作用薬は、作用機序に基づき、大きく8つに分類されます。
ⅰ.α、β受容体刺激薬
ⅱ.α1 受容体刺激薬
ⅲ.β1 ,β2 受容体刺激薬
ⅳ.β1 受容体刺激薬
ⅴ.β2 受容体刺激薬
ⅵ.間接型アドレナリン作動薬
ⅶ.混合型アドレナリン作用薬
ⅷ.その他のアドレナリン作動薬
ⅰ.α、β受容体刺激薬
このタイプの代表的なアドレナリン作用薬は
・アドレナリン
・ノルアドレナリン
・エチレフリン(エホチール)
などが挙げられます。( )の中が商品名の一例になります。
アドレナリン、ノルアドレナリン、エチレフリンは、アドレナリンα、β受容体刺激薬です。
アドレナリンは、α、β作用を共に示します。
ノルアドレナリンは、α作用の方がより強く示します。
エチレフリンは、α、β作用を共に示します。
ⅱ.α1 受容体刺激薬
このタイプの代表的なアドレナリン作用薬は
・ナファゾリン(プリビナ)
・フェニレフリン(ネオシネジン)
・メトキサミン(メキサン)
・ ミドドリン(メトリジン)
などが挙げられます。
ナファゾリン、フェニレフリン、メトキサミン、ミドドリンは、α1 受容体刺激薬です。血管収縮作用、瞳孔散大作用を目的に、低血圧患者や眼科手術の準備において使用されます。
ⅲ.β1 , β2 受容体刺激薬
このタイプの代表的なアドレナリン作用薬は
・イソプレナリン(プロタノール)
などが挙げられます。
イソプレナリンは、β1 , β2 受容体刺激薬です。非選択的 β 刺激薬とも呼ばれます。β2 受容体刺激による気管支拡張効果を目的に、気管支喘息患者に対し吸入で用いられます。
ⅳ.β1 受容体刺激薬
このタイプの代表的なアドレナリン作用薬は
・ドブタミン(ドブトレックス)
・デノパミン(カルグート)
などが挙げられます。
ドブタミン、デノパミンは、β1 受容体刺激薬です。主に心臓における心筋収縮力増大作用を目的に、心不全患者に対し用いられます。
ⅴ.β2 受容体刺激薬
このタイプの代表的なアドレナリン作用薬は
・トリメトキノール(イノリン)
・サルブタモール(ベネトリン)
・テルブタリン(ブリカニール)
・ツロブテロール(ホクナリン)
・フェノテロール(ベロテック)
・プロカテロール(メプチン)
・クレンブテロール(スピロペント)
・サルメテロール(セレベント)
・マブテロール(ブロンコリン)
・リトドリン(ウテメリン)
・イソクスプリン(ズファジラン)
などが挙げられます。
トリメトキノール、サルブタモール、テルブタリン、◯◯テロール、リトドリン、イソクスプリンは、β2 受容体刺激薬です。主に喘息に用いられます。◯◯テロールはβ2 刺激というのが、覚えるきっかけとしてよいかもしれません。
リトドリン、イソクスプリンは、切迫流産・早産の防止に用いられます。子宮平滑筋におけるβ2 受容体に選択性が高い薬剤であることが理由です。
ⅵ.間接型アドレナリン作動薬
このタイプの代表的なアドレナリン作用薬は
・チラミン
・アンフェタミン
・メタンフェタミン
などが挙げられます。
チラミン、アンフェタミン、メタンフェタミンは、間接型アドレナリン作動薬です。これらの薬は直接受容体を刺激するのではなく、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の遊離を促進する作用を持つ薬です。
これらの薬の特徴は、タキフィラキシーをおこすということです。タキフィラキシーとは、薬剤の反復投与により、急速に効果を失うことです。急速に脱感作するとも呼ばれます。ノルアドレナリンの遊離を促進した結果、ノルアドレナリンが枯渇するために脱感作がおきます。
ⅶ.混合型アドレナリン作用薬
このタイプの代表的なアドレナリン作用薬は
・エフェドリン
・メチルエフェドリン(メチエフ)
・ ドパミン(イノバン)
などが挙げられます。
エフェドリン、メチルエフェドリン、ドパミンは、混合型アドレナリン作用薬です。混合型とは、直接型、間接型両方の特徴を持つということです。つまり、受容体を刺激するし、神経伝達物質の遊離も促進するということです。
ⅷ.その他のアドレナリン作動薬
このタイプの代表的なアドレナリン作用薬は
・アメジニウム(リズミック)
などが挙げられます。
アミジニウムは、その他のアドレナリン作動薬です。
交感神経終末のノルアドレナリン再取り込み阻害作用
及び MAO 阻害作用により交感神経機能を亢進させます。
低血圧に用いられる薬です。
代表的なアドレナリン作用薬をまとめると、以下の表になります。
代表的なアドレナリン拮抗薬は、作用機序に基づき大きく5つに分類されます。
ⅰ.非選択的アドレナリンα遮断薬
ⅱ.α1選択的遮断薬
ⅲ.非選択的β遮断薬
ⅳ.β1選択的遮断薬
ⅴ.α、β遮断薬
ⅰ.非選択的アドレナリンα遮断薬
このタイプの代表的なアドレナリン拮抗薬は
・エルゴタミン
・エルゴメトリン(エルゴメトリンF)
・フェントラミン(レギチーン)
・トラゾリン(イミダリン)
などが挙げられます。
エルゴタミン、エルゴメトリン、フェントラミン、トラゾリンは、非選択的アドレナリンα遮断薬です。つまり、α1 ,α2 受容体を共に遮断します。エルゴ◯◯は、偏頭痛治療薬として用いられます。フェントラミン、トラゾリンは、褐色細胞腫の診断や末梢循環障害の治療などに用いられます。
ⅱ.α1 選択的遮断薬
このタイプの代表的なアドレナリン拮抗薬は
・プラゾシン(ミニプレス)
・ブナゾシン(デタントール)
・テラゾシン(ハイトラシン、バソメット)
・ウラピジル(エブランチル)
・ドキサゾシン(カルデナリン)
・タムスロシン(ハルナール)
・シロドシン(ユリーフ)
・ナフトピジル(フリバス)
などが挙げられます。
◯◯ゾシン、ウラピジル、タムスロシン、シロドシン、ナフトピジルは、α1 選択的遮断薬です。前立腺肥大に伴う排尿障害、高血圧に用いられます。
ⅲ.非選択的β遮断薬
このタイプの代表的なアドレナリン拮抗薬は
・プロプラノロール(インデラル)
・ピンドロール(カルビスケン)
などが挙げられます。
プロプラノロール、ピンドロールは、非選択的β遮断薬です。つまり、β1 ,β2 受容体を共に遮断します。狭心症の治療などに用いられます。喘息に禁忌であることに注意が必要です。
ⅳ.β1 選択的遮断薬
このタイプの代表的なアドレナリン拮抗薬は
・アテノロール(テノーミン)
・メトプロロール(セロケン、ロプレソール)
・ビソプロロール(メインテート)
・アセブトロール(アセタノール)
などが挙げられます。
アテノロール、メトプロロール、ビソプロロール、アセブトロールは、β1 選択的遮断薬です。不整脈、狭心症、高血圧の治療に用いられます。
ⅴ.α、β遮断薬
このタイプの代表的なアドレナリン拮抗薬は
・ラベタロール(トランデート)
・アモスラロール(ローガン)
・アロチノロール(アルマール)
・カルベジロール(アーチスト)
などが挙げられます。
ラベタロール、アモスラロール、アロチノロール、カルベジロールは、α、β遮断薬です。
高血圧に用いられます。この4つを完全に覚えて、他の◯◯ロールは β 遮断。特にロロールはβ1 選択的。と覚えると記憶に残りやすいかもしれません。
代表的なアドレナリン拮抗薬をまとめると、以下の表になります。
コメント