マススペクトル(MS)とは
マススペクトルとは、質量分析法によって得られるスペクトルのことをいい、MSと略されることも多いです。
マススペクトルを解析することによって未知の化合物の分子量を同定できるほか、その分子の一部分(フラグメントイオンといいます)の分子量もわかるため、化合物そのものの分子量と複数のフラグメントイオンの分子量を組み合わせて考えることによって、未知化合物の分子構造を解析する際に役立ちます。
実際にはこれ単独で解析することは少なく、1H-NMRや13C-NMRなどほかのスペクトルと合わせて解析することによって、構造決定をより簡単にすることができます。
質量分析法の原理
質量分析装置は、試料導入部、イオン化部、分析部、イオン検出部、データ処理部から構成されます。それぞれの場所の特徴は以下の通りです。
試料導入部
試料導入部は名前の通り、試料(未知の化合物)を質量分析装置に入れる場所のことです。
イオン化部
質量分析装置では電磁気を使うことによって試料の質量(より正確には質量と電荷の比)を測定するため、試料は電荷のあるイオンの状態でなければいけません。イオン化部はそのための場所で、ここで何らかの操作をすることによって試料をイオン化します。
「何らかの操作」のことをイオン化法といいますが、これには電子イオン化法(EI)や化学イオン化法(CI)、高速原子衝撃法(FAB)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)など、いくつもの種類があるため、それぞれの特徴については次の項で解説します。
また、イオン化部では化合物にプロトンを付加するなど、化合物の構造を壊さずにイオン化することもあれば、化合物のどこかの結合が切れて壊れた(フラグメンテーションといいます)ものがイオン化することもあります。
とはいえ、フラグメンテーションを起こしてしまうのが必ずしも悪いわけではなく、フラグメントイオンの質量がわかれば、メチル基があるな、とか、ベンゼン環があるな、とかがわかるので、これも構造決定の際の情報として有用です。
分析部
イオン化部によってイオン化された試料には様々な種類があります。
たとえば、分子にそのままプロトンが付加した大きいイオンもあれば、フラグメンテーションによって少しだけ欠けたもの、激しいフラグメンテーションによってばらばらに砕けた破片のようなものもあります。
これらをフラグメントイオンの質量ごとに分離するのが、この分析部です。
分離の方法には磁場偏向型、四重極型(Q)、飛行時間型(TOF)などがありますが、それぞれの特徴については次の次の項で解説します。
イオン検出部
イオン検出部は、分離されたイオンを検出する場所です。そのままではエネルギーが小さくて検出できないので、電子増倍管などを用いて検出します。
データ処理部
質量分析装置の最後がデータ処理部で、イオン検出部で得られた結果を基にマススペクトルを作成するところです。
以上が、質量分析法の大まかな流れになります。
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