前項では、芳香族化合物の求電子置換反応について、いくつかの反応例を挙げました。しかし求電子置換反応にはもうひとつ有名な反応があります。それがFriedel-Crafts(フリーデル・クラフツ)反応です。
Friedel-Craftsアルキル化
ルイス酸の存在下でベンゼンにハロゲン化アルキル(R-X)を反応させると、求電子置換反応が起きてアルキル基が導入されます。
このような反応を Friedel-Crafts 反応(より詳しくは Friedel-Crafts アルキル化反応)といいます。Friedel-Crafts 反応にはこの他に Friedel-Crafts アシル化反応というものもありますが、そちらについては後述します。
Friedel-Crafts アルキル化には以下に説明するような2つの重要な特徴があるのでぜひ覚えておいてください。
- 多置換体が生成されやすい
- 反応過程でアルキル転位が起こりやすい
1. について、アルキル基は反応性が高めの置換基(このことについては次項参照)なので、この置換反応が一度では終わらず、2 回、3 回と連続して起きるというものです。
ただし、これはアルキル基の大きさも関係してきます(R が大きければその分立体障害も大きくなり、反応性が落ちます)。
2. について、この置換反応は反応過程でカチオンを生じます。ここでより安定なカチオンになるべく(カチオンの安定性についてはこちらのページ参照)転位反応が起こります。結果、試薬である R-X の R とは違ったアルキル基が生成物の置換基となります。
Friedel-Craftsアシル化
上記のアルキル化反応ではハロゲン化アルキル(R-X)を用いましたが、これをハロゲン化アシル(R-CO-X)にすれば Friedel-Crafts アシル化反応になります。基本的な反応機構はアルキル化反応と同じような反応で、R-の部分が R-CO- になるだけです。
しかし、アルキル化での特徴(多置換体の生成と、アルキル転位)がこちらでは適用されません。アシル基は不活性基であるため、1つだけ置換した生成物はもう反応性が乏しくなり、ハロゲン化アシルが過剰にあってもそれ以上反応は進みません。
また、中間体であるアシルカチオンは共鳴安定化によりアルキル転位も起こりづらくなっています。
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