前項ではアルケンの付加反応のうち、anti 付加の説明をしました。一方の syn 付加も重要な反応ですので、以下にいくつかの具体例とともに説明していきます。
接触水素化(syn 付加)
接触水素化という有名な反応があります。これは、Pd や Pt 触媒の存在下でアルケンと水素が反応し、アルカンが生成します。反応式はとてもわかりやすく、以下の通りです。
ここでのポイントは、水素化が syn 付加として起こるということです。これは、この反応が金属表面上で起こるためです。そのイメージ図を以下に示します。
1,2-ジオール化(syn付加)
1,2-ジオール(1,2-diol)化とは、その名の通り、1位と2位の2ヵ所(di-)が同時にアルコール(-ol)化する反応です。アルケンに四酸化オスミウムを反応させると、二重結合が切れ、2つのヒドロキシル基が付きます。
この反応は以下のような反応機構で進行するため、これも syn 付加となります。
エポキシ化(syn付加)
エポキシ化とは、エポキシド(3員環のエーテル化合物)を生成する反応のことです。アルケンとm-クロロ過安息香酸(mCPBA)やトリフルオロ酢酸のような過酸(R-COOOH)が反応すると、エポキシドとなります。
反応機構は以下の通りで、環を生成するためには必然的に syn 付加ということになります。anti の向きだと、その距離が遠すぎて3員環が形成されません。
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