アルケンの付加反応(anti付加)

アルケンの反応

アルケンは二重結合を持ち、これは1つのσ結合と1つのπ結合を形成していることを意味します。このように電子豊富(電子リッチ)であるため、アルケンが求核剤として働く付加反応が起こりやすいです。

この付加には、原子(原子団)の付き方によってsyn付加とanti付加という2種類に分かれます。

付加反応が起こる際にはπ結合が切れて新たな2つの結合を形成するわけですが、その2つがアルケンの面に対して同じ側にあるものをsyn付加と呼びます。

一方、2つの原子(原子団)がアルケンの面に対して反対側から付くものをanti付加と呼びます。


(左)syn付加のイメージ (右)anti付加のイメージ

以下にその具体例を示しながら、くわしく説明していきます。

ハロゲンのanti付加

ハロゲンとは17族の元素、つまりフッ素や塩素や臭素などのことです。アルケンはハロゲンと反応し、ジハロゲン化物を生成します。例えばエチレンと臭素の反応であれば、1,2-ジブロモエタンが生成します。

この時、1,1-ジブロモエタンではなく1,2-ジブロモエタンであるのは理解しやすいと思います。なぜなら、二重結合が切れて、その2つの炭素原子のそれぞれに臭素原子が付くためです。同じ炭素に2つの臭素が付くわけではないので、1,1-ジブロモエタンのようにはなりません。

ここで、基質のアルケンがエチレンであれば臭素がsyn付加してもanti付加してもその結果は変わらないのですが、アルケンがtrans-ペンタ-2-エンである場合、事情が変わってきます。

まずは以下のイメージ図をご覧ください。

ちなみに、上図の上側がsyn付加で、下側がanti付加です。上の2つの図を見比べてわかるように、syn付加とanti付加によって生成物が変わってしまいます。

以上のようなことから、とある反応がsyn付加であるのかanti付加であるのかを見極めることは、非常に重要です。

ハロゲンの付加反応に話を戻しますと、これはanti付加になると決まっています。その反応機構は以下の通りです。ここではハロゲンを代表して臭素としています。

上図の通り、まずはアルケンが求核剤となって臭素と反応し、ブロモイオンが生成します。

今度は同時に生成したBrが求核剤となってブロモニウムイオンを攻撃するのですが、この時、ブロモニウムイオンは環を形成していて立体的に混み合っているため、同じ側(つまりsynの側)からは攻撃しにくいことが図からもわかります。

すると必然的にBrは反対面から攻撃することとなり、この反応はanti付加であると結論づけることができます。

以上がアルケンのanti付加についての説明です。syn付加については次の項で取り扱います。

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