代表的な分散系

分散系とは、小さい粒子が液体に浮遊あるいは懸濁しているような物質のことです。分散系は、分散している粒子の大きさにより大きく3つに分類されます。すなわち、分子分散系、コロイド分散系、粗大分散系です。

分子分散系における粒子は、1 nm 以下の小さい粒子です。電子顕微鏡、限外顕微鏡、光学顕微鏡のどれでも観察はできません。粒子は拡散しています。

コロイド分散系における粒子は、1nm~1μmです。電子顕微鏡、限外顕微鏡により観察することができます。粒子はブラウン運動と呼ばれる不規則な運動をしています。ブラウン運動とは、溶媒の分子が粒子に衝突することによる不規則な運動のことです。

粗大分散系における粒子は1μm以上です。光学顕微鏡でも観察することができます。粒子は沈降します。

コロイド分散系は、粒子の性質により更に2つに分類されます。すなわち疎水コロイド、親水コロイドに分類されます。

疎水コロイドとは、疎水性粒子が分散相であるようなコロイドです。例としては、金、銀、イオウなどが挙げられます。少量の電解質により、表面電荷が中和されると共に凝集します。この現象は凝析と呼ばれます。

親水コロイドとは、分散相の表面が親水性であるようなコロイドです。例としては、インスリン、ミセルなどがあげられます。大量の電解質を加えると凝集します。この現象は塩析と呼ばれます。

疎水コロイドに、親水コロイドを加えると、疎水コロイドの表面に親水コロイドが吸着して凝集しにくくなります。この、疎水コロイドを安定化する親水コロイドのことを特に保護コロイドと呼びます。

コロイド溶液に共通する光学的性質として、チンダル現象と呼ばれる現象があります。これは、コロイド溶液に強い光をあてると光の通路が見えるという現象です。

(ちなみに、均一溶媒の中において、任意の直径を持つ球が分散しているときの光の回折に関して厳密に計算した結果が、ミーの散乱と呼ばれる結果です。粒子がちょうどコロイド粒子程度の時に、光が、光の進行方向に対して角度0の方向(すなわち光の進行方向)により強く散乱される(これにより、光の通路が見えるという現象がおきる)という
結果が導きだされています。)

溶液中のコロイド粒子の安定性は、ファンデルワールス力と、静電相互作用のバランスにより理論的に考えることができます。この理論を、考案者4名の名前の頭文字をとって DLVO 理論と呼びます。※D:Derjaguin,L:Landau,V:Verwey,O:Overbeek 下のような図で表現されます。

又、コロイド溶液において、コロイドに富んだ微小液滴相と、コロイド濃度の低い周囲の平衡液相に分離する現象が条件により見られます。この現象をコアセルベーションと呼びます。生じた小液滴をコアセルベートと呼びます。

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