問 題
図は食品中の水分子の分布を表したものである。食品中の水に関する記述 ㋐ ~ ㋔ のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
㋐ 水分子は酸素原子が負に、水素原子が正に帯電した極性分子であり、食品中でアミノ酸残基との間に水素結合を形成してタンパク質を水中に溶かす。
㋑ 水は、氷になると水素結合の影響により分子間のすき間が狭くなる。このため、生鮮食品を冷凍・解凍すると組織破壊が起こり、ドリップを生じることがある。
㋒ 図に示される A,B,C の領域に存在する水分子の、溶媒としての働きの強さは A > B > C である。
㋓ 一般に、図中の C の領域に存在する水分子の量が多いと食品は腐敗しやすい。そこで、水和しやすい糖類を食品に加えて水分活性を低くすることが、食品の保存性を高めるのに有効である。
㋔ 水分活性値は水分含量によって決まるため、水分含量が同じであれば食品の種類が異なっても同じ値になる。
1.㋐、㋑
2.㋐、㋑、㋒
3.㋐、㋓
4.㋑、㋓、㋔
5.㋒、㋔
解 説
【食品中の水分 基礎知識】
食品中の水分には、結合水と自由水があります。結合水とは、栄養素と結合している水分のことです。結合水は、腐敗において微生物が活用することができません。自由水とは、食品中で遊離している水分で、微生物が自由に使うことができます。食品中の自由水の割合のことを水分活性と呼びます。
水分活性は「食品を入れた密閉容器内の水蒸気圧 P と、その温度における純水の蒸気圧の比 P0」で定義されます。つまり、P/P0 です。
㋐ は妥当です。
酸素原子 O の方が電気陰性度が高いため、水素原子から電子を少し引き寄せて負に帯電します。正解は 1 ~ 3 です。
㋑ ですが
水は物質の中で数少ない、固体になると「体積が増える」物質です。つまり固体である氷になると、水素結合の影響で「広く」なります。㋑ は誤りです。これにより、㋒ は誤り、㋓ は妥当とわかります。
㋒ ですが
「溶媒としての働き」は、溶質を溶かすことであると考えられます。溶かすために作用するのは食品成分と既に結合している結合水ではなく、フリーの自由水です。そのため、食品成分から離れている方が溶媒としての働きの強さは大きいと考えられます。つまり C > B > A です。㋒ は誤りです。
㋓ は妥当です。
自由水が多いと腐敗しやすくなります。
㋔ ですが
水分活性は蒸気圧の比です。水分含量が同じでも、食品の種類が異なれば違う値になることもあります。㋔ は誤りです。
以上より、正解は 3 です。
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