国家公務員総合職(化学・生物・薬学)R4年 問59解説

 問 題     

3 種類の油脂 A、B、C があり、その脂肪酸組成 (炭素数:二重結合数) は表のとおりである。これらの油脂に関する記述 ㋐ ~ ㋓ のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。

㋐ A の融点付近の温度では、B、C 共に固体である。

㋑ これらの油脂を加水分解するために必要な KOH の量が最も多いのは、B である。

㋒ 必須脂肪酸を最も多く含むのはB であり、B に含まれる必須脂肪酸は、体内でアラキドン酸やエイコサペンタエン酸に変換される。

㋓ 門脈から吸収され、直接エネルギー源となる脂肪酸を最も多く含むのは、C である。


1.㋐、㋒
2.㋐、㋓
3.㋑、㋒
4.㋑、㋓
5.㋒、㋓

 

 

 

 

 

正解.5

 解 説     

㋐ ですが
油脂の融点については「炭素数が多い方が高い」という一般的傾向があります。油脂 A,B は炭素数が 16 よりも大きい脂肪酸から構成される油脂と読み取れます。一方、油脂 C は、相対的に炭素数が小さい脂肪酸から構成されています。そのため、融点は C よりも A の方が高いと推測されます。すると A の融点付近では C は液体と考えられます。

また、二重結合が多い方が多いほど融点が低いという傾向もあるため、A よりも B の方がおそらく融点が低いと考えられます。すると A の融点付近では B も液体と思われます。

従って
㋐ は誤りです。正解は 3 ~ 5 です。

 

㋑ ですが
同じ グラム(g) の油脂であれば、平均分子量が小さい方が 物質量は大きくなります。すると 油脂 1 mol に対して KOH が 3 mol 必要なので、「平均分子量が小さい方が加水分解に必要な KOH は多く」なります。表より、平均分子量が 明らかに小さいのが、炭素数が少ない脂肪酸からなる 油脂 C です。そのため、㋑ は誤りです。これにより、正解は 5 です。㋒、㋓ は妥当です。

ちなみにですが
必須脂肪酸は、アルキル基末端から数えた、二重結合の始まりの位置により、ω-6 脂肪酸と、ω-3 脂肪酸に分類されます。代表的な ω-6 脂肪酸は、リノール酸、アラキドン酸です。代表的な ω-3 脂肪酸は、α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA:eicosapentaenoic acid)、ドコサヘキサエン酸(DHA:Docosahexaenoic acid)です。

「門脈から吸収され、直接エネルギー源となる脂肪酸」とは、中鎖脂肪酸と考えられます。中鎖脂肪酸とは、炭素数 8,10 の脂肪酸です。


以上より、正解は 5 です。

コメント