国家公務員総合職(化学・生物・薬学)R4年 問30解説

 問 題     

化合物 A の立体化学に関する記述 ㋐、㋑、㋒ のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、A の構造式中の数字は位置番号である。

 ㋐ A の立体配置は 2S、3S、4R である。

1.㋐
2.㋐、㋑
3.㋐、㋒
4.㋑、㋒
5.㋒

 

 

 

 

 

正解.1

 解 説     

㋐ は妥当です。

ほんの少し 2 位 の C を上からつまんでわずかに反時計回りに回転させるイメージで、まず紙面奥に伸びる H を意識します。そして、目線の先に 優先度の低い H をおきます。すると以下のように見えて 2 位 の C の絶対配置は「S」と判断できます。

同様に 3 位、4 位 についても判断してみてください!


㋑ ですが

全ての不斉炭素において、H と OH を 1 回反転しています。ある不斉炭素に注目して、任意の 2 つの置換基を 1 回交換すると、絶対配置は反転します。つまり ㋑ の化合物の絶対配置は 2R、3R、4S です。これは「エナンチオマー」です。ジアステレオマーではありません。㋑ は誤りです。


㋒ ですが

Fischer 投影式で表されているので、R か S かを判断する際は「置換基の入れ替え」を行い、十字の上側に最も優先順位の低い置換基を置くことで判断できます。H を除いた置換基の優先順位が高い方から 時計回りなら R、反時計回りなら S です。

この際、任意の2つの置換基を1回入れ替えると、絶対配置は反転(もともと R なら S、S なら R になる)します。これをしっかり忘れないようにしましょう!

3 位の炭素の注目して、H と 上の伸びている部分 を交換します。すると OH → 交換した基 の順なので「1 回入れ替えしたら S」です。

そのため、元は R となります。つまり、㋒ の Fisher 投影式で示された化合物は 3R です。化合物 A の立体化学は 3S でした。元の立体配置と異なります。㋒ は誤りです。 


以上より、正解は 1 です。

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