国家公務員総合職(化学・生物・薬学)R4年 問28解説

 問 題     

錯体の合成に関する次の記述の ㋐ ~ ㋓ に当てはまるものの組合せとして最も妥当なのはどれか。ただし、py はピリジンを表し、配位子 py、Cl、Br、NH3 に関し、各配位子のトランス効果の大きさは、Br > Cl > py > NH3 である。また、各配位子の Pt との結合強度は、NH3 > py > Br > Cl である。

「平面正方形錯体である [PtCl4]2- を原料とし、配位子である二つの Cl をそれぞれ NH3で置換する場合、 ㋐ -[PtCl2 (NH3) 2]が生成しやすい。

[PtCl4]2- を原料とし、段階的に反応させることで錯体 A を得る場合は、まず、Cl を一つ ㋑ と置換し、次に、残り三つの Cl のうちの一つを ㋒ と置換し、さらに残った Cl のうちの一つを ㋓ と置換する。

 

 

 

 

 

正解.2

 解 説     

平面四角形錯体の配位子置換反応では、離脱基に対してトランスの位置にある配位子が反応速度に影響を及ぼします。この現象をトランス効果といいます。トランス効果が大きいと、脱離しやすくなります。

PtCl4 が出発物質でまず一つの配位子が NH3 に交換されると、以下の図のように次に抜けやすいのは NH3 からみて cis の場所です。

従って、生成しやすいのは「cis」体です。㋐ は cis です。正解は 1 or 2 です。


選択肢 1 が正解と仮定すると
NH3 の次に置換される Br は、先ほどの 「2 つの Cl を それぞれ NH3 で置換する際 2 個目の NH3」と同様に、NH3 のトランスには配位しません。cis 側に配位されます。

錯体 A は NH3 のトランスが Br です。従って、この順番に置換すると錯体 A を得ることはできません。選択肢 1 は誤りです。


以上より、正解は 2 です。

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